JEUNE CREATION 2013 報告会 – 前編 –

JEUNE CREATION 2013 の報告会が、11月28日(木) に、アンスティチュ・フランセ 関西・大阪にて行われました。今回のブログ前編では、ART OSAKA 特別枠として派遣された鈴木悠哉氏に、報告会でのお話や、あの場で伝えきれなかったことを交えて、JEUNE CREATION へ出展した経験談について、テキストを寄稿頂きました。後編 (来週予定)では、審査員として現地入りした松尾良一氏(ART OSAKA 実行委員長/テヅカヤマギャラリー代表)による寄稿を予定しています。

町中にも行き届いた広報

町中にも行き届いた広報

このJEUNE CREATION (以下、JC) について率直な感想

今回、ART OSAKA 2013 において選出され、パリの公募展 JEUNE CREATION 2013 に参加致しました。
私は、はじめこの公募についてまったく知りませんでした。しかし、この公募はパリにおいては60年以上も続いている長い歴史を持っており、そのはじめから Jeune (=若者)が中心となって企画を推し進めてきた経緯を持っています。現在においては、若いアーティストの登竜門的なポジションを確立しており、パリでは、Salon de Montrouge というもう一つの公募と共に、2大若手登竜門と言われているようでした。

過去に JC を経験し、JC をきっかけとして大きく成長したアーティストが多く存在するそうで、そのことが、現在、本展がパリ市民やアート関係者の信頼を勝ち得ているように感じました。いわゆる公募展がこれほどまで注目されるという現状には驚かされました。

期間中はなるべく会場に居たのですが、ギャラリスト、コレクターなどアート関係者の層が多いのに加え、家族づれや老若男女と、お客さんの層が多様だった事も特徴の一つであると思います。
パリ市民のこのイベントへの関心の高さと、ギャラリストやコレクター、キュレーター層が若い才能を探してこの企画に足を運んでいる以上、アーティストにとってはこの場所で展示が出来るという事は大きなチャンスであることを意味すると思います。

今回私が参加したのは、ART OSAKA と JC の交換プログラムにおける特別枠であったのですが、それ以外の一般公募枠の競争は熾烈なものであるということを聞きました。そして彼らの展示を見るにつけ、展覧会全体から緊張感が滲んでいたように感じます。事実、ここでのプライズはアーティストの今後の活動においても大きなステータスになると聞きます。

総じて、この JC 展では、何か若いアーティストが国際的なアートシーンの舞台にのし上がっていくーその現場に立ち会えたような気がしています。公募展というものがアートワールドにおいても有効に機能している、という実感を持つにつけ、このような機会をアーティストはおおいに活用するべきだと感じています。

搬入の様子 運営スタッフも皆若いアーティスト

搬入の様子 運営スタッフも皆若いアーティスト

JCの組織、展覧会運営、搬入等について

JCのディレクターは3年おきに替わり、今回は自身もアーティスト活動を行っているジェレミー・シャボー氏が務めています。基本的に展覧会におけるアーティストの選定はディレクターを中心に行う為、展示全体はディレクターの趣向やコンセプトが大きく影響する事になります。
実際に選定されたアーティストの多くは、パリ在住のフランス人アーティスト、またはパリに制作の拠点を移している外国人アーティストとなっており、フランス色の強いものでした。 ただ、この公募はインターナショナルなものであり、条件として国籍等を問わない公募になっています。シャボー氏の意向として国外からの応募を歓迎しているようなので、アーティストの方で興味のある方は応募される事をお勧めします。

JC展会場 ル・サンキャトル 地下フロア

JC展会場 ル・サンキャトル 地下フロア

JCの会場は、ル・サンキャトル という文化複合施設で行われました。地下のフロアが今回の企画に割り当てられています。この施設は、もとは火葬場をリノベーションした大きめのスペースの中に、本屋、有機野菜売り場、カフェ、ダンススタジオ、などが入っており、パリジャンの週末のお出かけスポットのような場所でした。その中のイベントスペースで、毎回若者向けのアートイベントや様々な企画が行われているようでした。サンキャトルのある地区は、パリの中心からは幾分か離れた移民が多く暮らすエリアなのですが、この地区にスタジオを構えるアーティストが近年増えていると聞きました。場所、設備に関して、申し分ないと感じました。

次に企画の運営形態に関してですが、
本展は、数多くの企業、行政からの助成を受けていましたが、ディレクター及びスタッフ(照明、電気系統などの専門のスタッフは除く)は、基本的にボランティアでの参加になっています。そしてスタッフは、基本的に皆若いアーティストです。ディレクターのシャボー氏も含め、参加アーティストもスタッフも対等であり、わきあいあいという風に、企画は進められているように感じました。
問題点としては、サポート体勢において、スタッフがプロフェショナルでは無いため、出来る人が出来る事を行う、ということが基本としてあり、作業能率が悪い、という印象がありました。私自身の搬入では、信頼出来るスタッフを最終的に2人くらいに絞り、彼らとの共同作業で現場作業を行いました。

国際交流、交換プログラムの特有の課題

フランス人とフランスで展示をするということが、初めての経験であった為、日本人とフランス人の気質の違いであったり、物事を行う際の時差のようなものを、おおいに知るきっかけになりました。異文化圏の人と共同作業をするときに感じるこのようなギャップは、実は重要な要素ではないかと感じています。そのギャップがあることで作業は難航するのが常であり、合理化は阻まれるわけなのですが、そのギャップを許容する事はそのままその国の文化理解に繋がる事もあると思います。
今回の彼らとの作業の中で最も印象的だったのはそのようなギャップについてです。また、一番学ばされたのもその部分だったと感じます。

JCとART OSAKAとの今回のプログラムにおいて、実質的な問題点は幾つかあったと思います。そのことを改善していくことはもちろんですが、異文化の人間同士が関わる以上生じてくるギャップに対しての構えのようなものはアーティストにとっては特に必要なものであると感じています。

私の搬入の際も、そのような事情から最後まで完成するのかしないのか、ハラハラする局面は続きましたが、最終的にはフランス人は時間に間に合わせて、完成させる人たちです。作品のインストールにおいては、要求していた機材も最終的に用意してもらう事ができ、ほぼ要求していた通りの展示をする事が出来ました。
必要機材に関する追記として、私以外の他の公募枠のアーティストたちは必要なものを自分で用意をする必要がありました。今回、自分はART OSAKAの特別枠での参加であり、そのために運営側から全面的にサポートを受ける事が出来ましたが、そういった点においても公募枠との温度差はあったと感じます。

来場者の様子 美術関係者からパリ市民まで幅広い観衆

来場者の様子 美術関係者からパリ市民まで幅広い観衆

展示作品に関して、来場者の反応

展示全体はやはり若々しい印象があり、また基本的にコンセプト重視の作品が目立ちましたが、中には絵画やドローイングなどのオーソドックスなメディアを使う作家も見受けられました。
一概には言えない事だとは思いますが、フランス人はどちらかというと最終的にビジュアルをきれいに見せる性質があると感じます。そこはある意味で日本人と同じように美学的な見地というものの占める割合が高い、と言えるのではないかと感じました。対照的にドイツでは一般的にポリティカルで見た目がワイルドな作品が目立つように感じていたので、今回の JC の展示全体を見渡す限り、すっきりしていてスマートな印象がありました。

筆者の展示ブース  映像2点とドローイング20点から構成

筆者の展示ブース 映像2点とドローイング20点から構成

Yuya Suzuki「untitled」 2012-2013  pencil on paper  300 x 400 mm / each

Yuya Suzuki「untitled」 2012-2013 pencil on paper 300 x 400 mm / each

Yuya Suzuki「untitled」 2012  pencil on paper  210 x 298 mm / each

Yuya Suzuki「untitled」 2012 pencil on paper 210 x 298 mm / each

今回の自分の展示に関しては、ドローイングおよそ20点と、映像2点の展示構成になりました。搬入時間が実質2日間程度はあったので、もっと手のこんだインスタレーションも可能であると感じました。
作品の内容に関しては、サウンドイメージとビジュアルイメージをすり替える、ということをビデオの中で行っています。知覚や認識のズレがあり、そのことをきっかけに生じてくるまた別の内的な空間の事をモティーフにしています。結果的に構造の分かりやすいビデオになったと思います。そのために見た人のダイレクトな反応を得る事が出来ました。単純に面白いと言ってくれる人から、作品の構造の深い部分を指摘してくれる人もいたり、様々でしたがすべての反応が自分にとって有効だと感じました。とても有意義な体験だったと思います。

その他、雑感

加えて有意義だったのは、今回展示期間中パリに滞在し幾つかの美術館やアートセンターを巡ったことでした。
パリ市民のアートへの関心の高さに加え、行政がバックアップした上で、企画側もしっかりとした見せ方が出来ていると感じました。こういった行政と国民の間でのアートへの信頼関係というものがフランスでは着実に築かれているのだと感じます。
特に印象に残った話の中に Le Plateau というギャラリー(アートセンター)の事*1があります。このギャラリーと美術館の中間のような性質をもつ施設は、フランスの地方都市に約50ほど点在しており、これは文化事業の一環として行政のバックアップのもと、運営されているようです。
ユニークなのは、2年間の期限付きで一人のキュレーターが派遣され、企画を一任させるという仕組みがあると言う事*2。また、そこで展示を行った作家の作品を基本的にそのセンターが買い取るという仕組みがあるということ。私がパリのこの Le plateau に行った時は、ライアン・ガンダーの展示が行われていましたが、小規模ながら見せ方は秀逸でした。フランスのアートに対しての懐の深さのようなものを思い知った気がしました。*3

日本のアーティストは国内の活動にとどまり、アートにおいての世界の舞台に乗り上がる事が困難な状況があるように思います。多くの場合、いわゆるアートワールドで制作活動を続けていくとなった時に、基本的にはセルフプロデュースであり、すべてのマネージメントを自分自身で行う事が前提になります。
制作と同時に生活の問題を抱える多くのアーティストにとってこの事は大きな負担となっており(それは国内在住作家も、在外作家も同様だと思うのですが)海外の舞台で勝負するという段階まで行き着くまでにも、あらゆる生活のリスクが存在しています。

アーティストは、基本的に様々なチャンスを自分自身の実力と運で勝ち取って行く他無いと思われますが、今回のプログラムのようにアーティスト以外の人たちの尽力によって、海外にプレゼンテーションの場所を与えられるという機会は、少なくとも日本のアーティストにとってはかなり有効であると感じています。それが、例えば  東京ワンダーサイト  などの団体が行うような、「レジデンス」の交換プログラムという形もあり得ると思いますが、今回のように海外の「公募」で行う事の意義も同様に大きいと感じます。
レジデンスがその地方のアートコミニティとの交流に終始する事が多い中で、公募展においてはギャラリスト、コレクターなどのアートワールドの人間と接触する機会が多いということが、特徴の違いの一つとしてあげられるのかもしれません。

しかし、アートワールドのプロセスにおいて機能している公募展を探すのはまた困難な事であり、現に今回の JC のような若手の登竜門的な公募展が各国にあるかといったら、そうとも限りません。アワード等のコンペは、数限りなくあると思いますが、公募展は意外なほど少ない気がしています。

こうした現状の中、今回 JC に参加出来た事は得難い経験であったと思っています。また、今回の JC と ART OSAKA のエクスチェンジプログラムが、両者の友好関係と好意から成り立っている点は特筆すべき点だと思います。
文化予算の少ない日本の行政をバックにして、日本でアートプログラムを実施する事が基本的に困難であると感じています。行政(あるいは企業)を説得する言葉を探すうちに、本質はどんどんズレていくようです。例えば今回のプログラムのように、国を越えての個人と個人の結びつきや、信頼関係から成り立つ企画のかたちもあるのではないかと考えています。

そのことを軸に、多くの人のサポートを経てこの企画は成り立ったのだと思います。
少なくとも私自身はこのプログラムを(幾分大雑把ではありますが)そのように捉えており、そのことを思うにつけても、このような展示の機会を設けてくれた日本、フランス両国のスタッフの皆様、関係者の皆様に感謝しています。ありがとうございました。

公募展・国際的なアワードの情報参照リンク
フランス / 公募
Salon de Montrouge http://www.salondemontrouge.fr/
Jeune creation http://www.jeunecreation.org/
Open Call for 2014, 締切 3月1日 http://www.jeunecreation.org/en/appel-a-candidatures-jeune-creation-2014/

フランス / アワード
Bourse Jean-Claude Reynal  http://www.rosab.net/bourse-reynal/accueil.php

ドイツ / アワード
http://www.kunstfonds.de/
http://www.artgrant.de/en/


*1 Le Plateauはパリだけの名称で、他のフランスの都市では、Frac(Le Fonds Régional d’Art Contemporain)という、日本で言うと文化庁が組織している国が経営するアートセンターです。

*2 2年間限定のシステムはパリだけにあったもので、今は財政が厳しいので休止しているようです。あとはそれぞれのFracの運営にまかされています。外からキュレーターを招く事もあるようです。

*3  Fracは、1980年代まではパリに全ての美術展が集中していたため、地方にも美術展を分散させようという考えから作られました。地方に住んでいる人も気軽に、そして無料で現代美術に触れてもらう事が目的となっています。こういったことからも、フランスにおいてはアートの垣根がとても低くなっているのだと言えます。

text:鈴木悠哉 / アーティスト・JEUNE CREATION 2013 出展作家
Salon de Montrouge やFracに関する情報提供:糟谷恭子 / パリ在住 アートコーディネーター

広告