『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 松平莉奈×加藤義夫(加藤義夫芸術計画室/ART OSAKA実行委員)

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私の「日本画」とは

加藤:『京都市立芸術大学アートで目覚めるvol.2』展の準備のために、今年2月の京都市立芸術大学作品展へリサーチに伺わせていただいたのですが、その時、松平さんは圧倒的に上手いからびっくりしたんですよ、ずば抜けていたので。

松平:ありがとうございます。

加藤:『ART OSAKA』は、コンテンポラリーアートと言われる現代美術をメインに展開するアートフェアです。そこで、日本画家としての松平さんに敢えてお伺いしたいのですが、現代美術に対してはどんなイメージを持っていますか?好きな作家などはいるでしょうか?

松平:一番好きなのは、高嶺格さんです。あとは、ソフィー・カルさんとか。

 加藤:彼らの作品は琴線に触れるというか、いいなーっと思うんですか?

 松平:人を扱っている作品だったり、物語性が強い作品が好きですね。物語ということについては、最近すごく気になっていて、自分の中で必要としているんだと思います。

加藤:ポートフォリオを見せていただいて、エゴン・シーレやウィーン世紀末の絵画をイメージさせる画風でいらっしゃったんですね。そもそも彼らは琳派に影響されているので、当然の如くかもしれません。しかしこの一年間に松平さんの制作スタイルは、より日本画的な手法や方向に打ち出していくよう大きく変わったように見えますね。
松平さんは、数年前のインタビューでは「自分の中の「日本画」というのを1つ見つけて、そこから日本画の良さも含めて発信していこう」と仰っていましたが、実際に勉強を重ねた今、あなたにとっての日本画とはどのような存在と言えると思いますか?

松平:今は「日本画」と敢えて自分で名乗る事で、これまでずっと続いてきた絵画であり伝統とも繋がるという意味で、こだわってみようと思っています。時代は違うけれど同じ立ち位置でいるんだ、と

加藤:日本の大和絵から続くような、日本画の流れの中の脈々としたものを受け継いで現代に、と?

松平:そうですね。日本の絵師達はずっと横のつながり持って、外の世界を見ていたわけで、そういうものの見方をしていきたいと思っています。「日本画」と名乗りながらも、現代美術の分野で活動している方々と同じように世界を見て、自分の技法で作品に落とし込み、シンプルに絵を描くという当たり前の事をしていきたいんです。                この一年で、自分では何が変わってきたかというと、日本画の素材に一番合う、素材が活きる描き方を探していくうちに自然とここに行き着いて、すなわち伝統的な描き方に還っていくことになりました。

加藤:なるほど。その立ち位置から、ご自身の「日本画」の未来についてはどういう風に考えておられますか?

松平:最近の考えでもいいですか?

加藤:もちろん。

松平:特に私が共感するのは歴史画家なので、史上のある場面を絵図の中に、いろいろな物語性を込めて、その時代々々の作家の思想も造形的に表していけたらと考えています。

松平莉奈《一休森女伝》2014|紙本着色|137.9×76.5cm, 137.9×46.4cm, 137.9×71.0cm ©Rina Matsudaira

松平莉奈《一休森女伝》2014|紙本着色|137.9×76.5cm, 137.9×46.4cm, 137.9×71.0cm ©Rina Matsudaira

《一休森女伝》

加藤:では、大学の作品展に出されていた《一休森女伝》には、どのような松平さんの思想が込められているのでしょうか。

松平:この作品では、まずマイノリティーについて描きたいという思いがありました。私がコンセプトとしている事は、他者という存在をどこまで想像するか、なのです。自分と他者との間の距離感に興味を持ちながら制作していて、人と人との関係にずっと興味があったので、実は去年の夏から半年間、身体障がい者の方の介助の仕事を始めました。抱き上げたり、体を支えたり寝かせたり、仕事の間はずっと身体と身体が近い状態でその方と接していろいろな動きをします。相手のバックグラウンドや指示を洞察して、自分はこういう行動によって応えようと考えていく。そういう仕事場を経験しました。

加藤:他者というのは、自分と誰かというところの距離感なのでしょうか。それとも差異という意識が強いのですか?

松平:他人の事は完全には理解出来ない、理解し合えない存在だという事を前提に関係を築いていく。それが今後はより必要なのではないかと思っています。今はインターネットもあるし、知ろうと思えばどこまでも情報を追って知っていけるような錯覚に陥りますが、実は物理的な距離が近くても絶対に解り合えない方が自然ですよね。日本画の場合、たとえば線が一本にまとまっていたり、一つの面に形を納めたりだとか、ものすごく表現が限られていて、抑えられている。その中で私は何を語れて、人は何を見て取るのだろうかと。そこに、私が「日本画」と呼んでやっていくことの意義も感じています。

加藤:よく分かります。

松平:この《一休森女伝》に登場するのは、もちろんあの有名な一休さんと、森女との二人です。一休は晩年の10年間ほどを、森女という目の見えない女性と共に暮らし、彼女に菩薩を見るまでに神聖化していたと言われています。たくさんの詩や衝撃的な愛の描写に至るまで、さまざまな記述が残され今に伝わっているのですが、でも森女の方はどうだったのか?彼女の心中に深く降りていった形跡や文献は全然無いんです。それからいろいろと調べていって、森女が描かれた絵が一つだけ、《一休宗純と森女図》という掛け軸が正木美術館にある事を知りました。円相図として一休が上の方に描かれていて、円の外側の下の方に、上げ畳に森女が座っているという絵です。視線は互いに合っていないし、円の内と外という構図からも、2人の間にはすごく断絶があると一目で分かって、「ああやっぱり」と思いました。そして、この絵を描きたい!と思い付きました。文献が少ない分、私の中では森女の方がすごく想像してしまうというか、共感出来る存在だと思えたので、彼女を主役にしています。

加藤:松平さんが「一休と森女」という過去の物語を咀嚼して、自分の世界観を一つここに出そうとされたんですね。

 

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『ART OSAKA』と、これからのテーマ

加藤:今回の『ART OSAKA』での展示では、ちょうどこの部屋を使う予定なんですよね。

松平:はい。今日は下見も兼ねてこのホテルに初めて来させていただいて、すごくきれいで心地良い空間だと思いました。この空間と、絵のある形という両方の心地良さを、来てくださった方々には目で見て体感していただけたらなと思います。足を踏み入れるだけで光が差し込んで、ハッとした気持ちになると思うので。

加藤:さきほど、ご自身の日本画の未来についてお伺いしましたが、具体的に考えておられることはありますか?

松平:今は、それこそ一休の時代であったり、すごく中世に興味があります。

加藤:その辺りの事は調べたり、研究したりしようと思っていると?

松平:江戸時代以前の日本の絵画の中で行われてきた表現がすごく新鮮で、今もう一度この心境というものが必要なのではないかと。感覚的でしかないんですがそう考えています。夢と現実の境目など、そういうものを単純に記号的に分けて考えている事を見直したいというか…。それが、次のテーマになっていきそうです。

加藤:それはぜひおもしろそうです。これからも応援したいと思っています、ぜひ頑張ってください。

松平:ありがとうございます!

インタビュー収録:2014年4月27日、ホテルグランヴィア大阪・6210号室にて 編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

インタビュー収録:2014年4月27日、ホテルグランヴィア大阪・6210号室にて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

松平莉奈略歴

1989年兵庫県生まれ。2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画修了。2014年「punto」オープンスタジオ(京都)、個展「未だ見ぬ熱帯」ギャラリーモーニング(京都)、2013年シェル美術賞展2013入選、京都銀行美術支援制度 2013年購入作品選抜、グループ展「△のリンゴ-この世界を変える4つ目のリンゴについての仮説-」StudioJ(大阪)他。

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