『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

ART OSAKA 2014 企画展
出展作家インタビュー 『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2
髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm  ©Tomoko Takagi

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm ©Tomoko Takagi

《Trio》—この一年の制作について

松尾:今年も去年も、京都市立芸術大学の作品展では髙木さんの作品を拝見して、「あっ!」と印象に残るものがあるんですよ。あまり頭でいろいろ考えてというよりも、直感的に良いなと感じて入っていく事が僕自身は多くてね。コンセプトを聞いてなるほどと思う事もあるんだけど、やっぱりパッと見て「あーいいな!」と。

髙木:ありがとうございます。この一年間は、自分がどういう事をしたいのか、学部生の4年間でやってきた事との繋がりなどを言葉に置き換えていく作業が続いていたんです。2月の作品展では、それをやっと絵の具に置き換えて少し納得がいくようになってきたところでした。

松尾:じゃあ、コンセプトよりも、例えば、制作の技術的な事に集中されていたとか?

髙木:そうですね。色の事とか、絵の具の事とか、これまでは無関心だったところも掘り起こしてみたりして…。モチーフ自体は、何かモノを描きたいという思いは変わらずにあるので、それを抽象みたいに出来ないかなと思って。

松尾:身近なというか、京都で歩いているとモチーフになるものがある、と仰っていましたよね。

髙木:出来るだけカメラを持ち歩くようにしていて、「あーなんか気になる!」感じるものをいっぱい撮りためているんです。どうやら自分には、人が飾っているものとか、自分が並べたものではない状態の色の組み合わせに、「なんだこれは」と反応しているところがあって。それは描くモチーフを選ぶ基準にも繋がってきています。

松尾:作品展で出品されていた《Trio》という作品は?

髙木:これは、丸亀のお城の下でやっていた盆栽展の中で見つけた3体の人形の飾りが元になっています。普通に真面目な盆栽が並んでいるのですが、いくつかは不思議な飾りがされている盆栽もあったんですよね。なので、人形とかモノの位置関係はすごく忠実です。

松尾:不思議やな(笑)。

髙木:今は、同じモチーフを何枚か描き続けるように制作しています。一枚つくってから、次はもっとこの部分を伸ばそうとか、構図は縦にする方がいいかなとか、焦点のピント位置をずらしたりと、描いていく中で次のアイディアが具体的に現れてくる感じです。

松尾:色の使い方が独特ですよね。色目の濃淡がけっこう好き。

髙木:透明のメディウムに絵の具をちょっと混ぜて、白の下地にのせると透明色がぐわっと出てくるので気持ち良いんです。

松尾:モチーフを撮りためた写真にも、もともとカラーという色味があるじゃないですか。実際に描く時には、自分で目標としている色にモチーフの色を変化させて近付けていくのか、それとも、キャンバス上で偶発的につくりながら決めていくのですか?

髙木:描きながら目の前で混ざり合って、いい感じだなあと思う事ももちろんあるのですが、たいていは絵の具をあまり混ぜないので、この色をと自分が思うものを先に決めて描いています。最近は下地を白色ではなくピンク色か緑色の2パターンでつくり、その上に描き始めていくようにもしていました。

松尾:画面構成は、全く違う写真の場面から組み合わせてつくり始めてもいるようですね。

髙木:はい、それもやり始めています。描かれているものが何であるのか、パッと見えてしまう事から逃れたいと思っていて…。他にもシンメトリーな構図にしたりだとか、どんなふうに絵の具を動かして物質感をコントロール出来るのか、いろいろと試し中です。油絵の具は透明にも不透明にもできるし、一番薄い状態からすごく分厚いところまで幅をもたせられるのが…。

松尾:すごくフィットすると?

髙木:そうです(笑)。takagi_matuo

 

物がどう見えるのか、を考え直す

髙木:実は、いろんな大人の人に聞きたいと思っていることがあって…逆に質問させていただいても良いですか?

松尾:お、何かありますか?

髙木:えーと、学生くらいの時に、大人になったらいろんな事が全部分かるようになって、何でも理解できているようになるのかもって、思っていた気がするんです。そういうふうに思った事って、松尾さんにもありましたか?

松尾:まあ、あったんじゃないかな。子どもの頃とか、そう思っていたかもしれない。

髙木:で、でもどこかで全部は理解し切れないんだなと気付いた時には、どう思いましたか?

松尾:世界って広いなあ、って思った。僕ね、25歳くらいでこの仕事を始めて、最初はアートビジネスなんて自分で全部出来るんじゃないかって思っていました。漠然と、世界で一番になれるんじゃないかっていうくらい(笑)。それは大きな間違いだなというのは、人生もそうだけど、この世界も仕事も知れば知るほど深くなっていくわけ。子どもの頃は学校で一番だったら、世界で一番ちゃうか!ぐらいに思っているけどね(笑)。歳をいけばいくほど、自分の小ささを感じる。無力さというか、こんなもんなんやなーみたいになってくる。でも、それでいじけるんじゃなくて、もうちょっと頑張ろうってね。

髙木:続くんですね。

松尾:続くよ。

松尾:本当は結構ね、何でも分かった気になって天狗になっている人も居ると思うよ。でも人間って、「うわぁ、俺ってもっと頑張らな!」って思っている方がやる気が出るんじゃないかな?あと、周りの仲間や友だちを見て、「あいつも頑張っているから、俺も!」とかね。

髙木:この話とはあまり繋がっているように思っていただけないかもしれないのですが、最近、物がどう見えるのかという事をもう一回きちんと考えてみようと思っているんです。かつて浪人している時には「デッサンはこういうふうにするんだよ」と、既に出来上がっている方法でいろいろと教わったりもしたんですが、本当は物を認識するのってそういう事じゃないよなーと。自分が描いているものが、立体感や空間のパースペクティブをちゃんと出すというわけでもないので、改めて、じゃあ何なんだろう?と。

松尾:物の対象の見方として、どういうふうにしていくかという事は、作品を描くにあたっての一つの自分のスタイルでもあるだろうし、同時にコンセプトでもあるだろうし…。自分の精神のどこかにそういう思いを持っている事が、直接的では無いかもしれないけど、いずれ間接的にでも、髙木さんが描く何かに現れて出て来るかもしれないね。例えば、そういう自分の表現を文章や言葉に出来るのなら、出来るほうが良いし必要だと思う。

髙木: はい。やっておきたいですし、出来るようになりたいですね。どう見ようかなと、どう描こうかなとは、やっぱり自分の中で繋がっている事なので、模索中ではありますが…。それから、盆栽の中の人形もそうですが、人が飾っている物を描くのは、私にとってある種の理解できない事として興味を持っているからではないかと思うんです。世界の全てを理解し切れないのだとしたら、自分の身の回りの小さい関係を確かめていくしかないので、私は描いていく事で、もう一度世界のいろいろな物事を見ていくのだと思います。

松尾:来年春の卒業後、アーティストとして活動していくにあたって、具体的なイメージはありますか?

髙木:すごく漠然とはしていますけど、住むところと描くところをちゃんとする、というくらいでしょうか。いまは制作を集中してできる場所にいるので、描く内容と絵の具のことをずっとやってはいますが、なぜこれを描くのかという部分をまだまだ考えたいです。発表する場所は、気になったら何でもやろうという思いは常にあります。

松尾:「ART OSAKA」では、新作を?

髙木:はい。

松尾:ぜひ楽しみにしています。

髙木:ありがとうございます。
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インタビュー収録:2014年5月12日、TEZUKAYAMA GALLERYにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

 

髙木智子 略歴

1989年千葉県生まれ。現在、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画在籍。
2014年京展にて市長賞・京都市美術館賞を受賞。昨年の『ART OSAKA』企画展にも出展。
個展:2014年ギャラリー恵風(京都)2013年ギャラリ−モーニング(京都)他/グループ展:2013年「アートアワードトーキョー」行幸地下ギャラリー(東京」他。

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