第4弾「アートで目覚めるvol.3」作家インタビュー:天牛美矢子

ART OSAKA2015企画展「アートで目覚めるvol.3」の出展作家インタビューも4人目となりました。京都市立芸術大学の染織を専攻されていた天牛美矢子さんへインタビュー。インタビュアーはギャラリーノマルの山田将也さんです。バックグラウンドや、制作に対する姿勢などを伺いました。

私たちは種を蒔く / 2015

私たちは種を蒔く / 2015

〈作品展の印象 – 作品のコンセプト〉
Y:天牛さんの作品は、去年の作品展でみていて印象に残っていたんですよ。それで今年もみて「あっ繋がったな」っていう感じだったんです。京都市美術館の中で、圧倒的に強く感銘を受けました。作品と天牛さん自身の個性がすごいマッチしているようにみえたんです。
T:嬉しい、ありがとうございます。
Y:そういうところから、まず作品を作るにあたってベースになるようなところが気になりました。
T:そうですね、いつもベースになっているのは、日常生活です。作品はファンタジックな様相をしているものが多いんですけど。実際には、私が日々を過ごす中で様々なものを見て感じて消化できなかった思いを、更によりよく見ようとしたときに作品が出来るんです。わからない物に対して仮説をたてるように物語を作ったり。いつも悲しい感情がベースになっていることが多いですね。悲しいってなった時に、その感情の中で不安になって日々を過ごしていくんじゃなくて、それをより消化していくことで、自分の前に進むきっかけにもなる。それでできたもので周りの人になにか示唆するようなものをつくっていけたら、といったことを思いながら作っています。
Y:すごいポジティヴなイメージ。
T:そうなんですよ。ネガティヴ派生のポジティヴなところにいけたらいいなって。感覚としては、ブルースを歌うような気持ちに近いです。
Y:強い思いはある中でも淡々とつくっていくっていうような感覚なんですね。
T:そうですね。
あとは歴史とか、個人の記憶とかっていうところからイメージが派生しています。ここのところは焚書をテーマにしています。
2月の作品展のものは、最近の世の中の情報規制に対することだとか、個人的な、私と私の曾祖父母の記憶とかっていうものが混じってできたものです。
Y:自分の経験だけじゃなくて、関わりのある人の記憶と繋がっていくようなイメージなんですね。
T:そうですね。あの作品は「私たちは種を蒔く」っていうタイトルだったんですけど、ひとつひとつのモチーフに物語があって文章を書くような感じで作品をつくっていました。
Y:昨年の作品展は青い旗に星座のようなイメージがありましたね。

熊を追う話 / 2014

熊を追う話 / 2014

T:そうですね、あの時はアメリカインディアンの星の神話からきていて。そこから色々派生してつくった作品だったんです。言いたいことをどこまで作品に言わせるのかみたいな葛藤があった中で、割とスンッてまとまってできて。これはこれでまだまだですが結構気に入ってます。
Y:すごいきれいにまとまってるという言い方は失礼なんですけど。
T:いや、でもまさにそうでした。まとめすぎた自覚はありました。
Y:それで、去年に比べると今年はもっとむき出し感がとても強い印象がある。
T:そうですね。

〈大学での先生や同期の友人〉
Y:先輩や学校の先生からの影響はありますか。
T:ありましたね。私の先生は、いわゆるファイバーアートの作品を作ってきた方だったんですけど、染織の研究もすごくされていて。ゼミで布にまつわる歴史とか、使われてきた背景とかをたくさん教わることがありました。後は同じゼミに入る子達が、割と尖った感じの子が多くて影響されあっていました。
Y:それはやっぱり京都市立芸術大学(以下、京芸)ならではなのかな?
T:それもあると思います。京芸って、根が真面目な人がめちゃくちゃ多いんです。
でも先生達自身が、「私らが作った作品より、趣味や仕事で作った人のやつの方が面白かったりするよね」みたいな風に垣根無く言っちゃう緩さがあったりして。そういう場所で、作品を作ろうとしていく子達は変にかまえていないスタンスの人が多かったです。芸術だから偉い、工芸だから偉い、趣味だからダメとかそういうことでは考えていなくて、だから楽しめた部分はあったのかな。

〈ご実家のお話〉
Y:バックグラウンドについてお伺いします。ご実家が古本屋さんということを聞いたのですが、子供の頃から本に囲まれて生活してきたのですか?
T:もうまみれてました。本店が下にお店があって上に自分の家っていう造りなんですけど。小さい頃とかは好き放題にしていて児童書の一角で座り込んでいたりしました。

インタビュー風景 右:山田将也(ギャラリーノマル) 左:天牛美矢子

インタビュー風景 右:山田将也(ギャラリーノマル) 左:天牛美矢子

Y:一般で売られるものだけではなく、古本界のマーケットの中を行ったり来たりするようなすごい歴史あるものとかも実はいっぱいあるんですよね?
T:そうですね。本の他にも本の中に当時の広告とか、手紙とか。あとは、昔の軍の徴収が来た時の徴収令であったり、めずらしい紙媒体がまぎれていることもあります。他にも家の整理をしてほしいみたいな時に、昔の家族のアルバムとかも目にする機会があって。知らない人の生活を垣間みている感じだとか、色んな人の記憶のエネルギーみたいなものに刺激されます。

〈これまでの展示のお話〉
Y:これまでの展示経験について聞かせてもらっていいですか。
T:個展をしたのはKUNST ARZTさんが初めてでした。4回生の時に私院浪していて、最後の作品でどうしよう、ってなっていた時に、声かけていただいたのが岡本さん(KUNST ARZT代表)だったんです。あとは、学部を卒業して共同スタジオに1年だけいました。その時の先輩が私以外全員油画で。その時に油画の人達の作品作りの思考回路を深く聞くことがあって、すごく刺激になりました。

〈ART OSAKAに向けて〉
Y:ART OSAKA に向けてなにかイメージはありますか?
T:そうですね、2月の作品展から話が繋がっていて、もう少し掘り下げていこうと思っています。
ホテルの宿泊場っていう、それこそ人がよく訪れる記憶のイメージであったり、人の気配のする空間っていうのには興味があって。今出したいなって思っている要素と、あの場所での展示をどうするかっていうところをもうちょっと詰めていこうと色々考えてるところです。
Y:ホワイトキューブでの展示とは異なるから、どう見せるか色々考えないと難しいとは思うけど。
T:まだぼんやりとしていますが。これからですね。

〈今後のビジョン〉

Y:これからどういうイメージで作品制作を続けていこうと思っていますか?
T:作品をつくることでなにかメッセージを発信したいっていう部分があるので、きちんと発表していきたいなと思っています。展示をしていくことで自分がどういうものをつくれるのかっていうのをみていきたいですし。
でも今は卒業して実家を継いでいこうと思っているので、その中でどれくらいの頻度でつくっていけるかは分からないけれども、たくましく作っていきたいなと思っています。
実家の古本屋で働いている中で作品にも影響が出てくるかもしれないですし。
実際に、この間の作品で一部本を使っていたり、あとは最近、長谷川由貴さん(2014年「アートで目覚めるvol.2」出展作家)とドローイングと文章をメインにMOTELっていう名前でZINEをつくったんですよ。そんな感じで作品の形態や別の表現の形として出てきているなと思います。

MOTEL vol.00

MOTEL vol.00

Y:色んな形態っていうのはきっと可能性を広げる上で重要でしょうね。伝えたいことやつくりたいイメージっていうのがはっきりしていたら別に表現の方法はなんでもいいとは思うので。
T:そうですね。どのような手法が自分に一番向いているのかっていうのはまだ探ってる途中だと思いますし。革などをよく使いますが、ああいう素材はとても好きだけれど、自分が出したいと思うメディアとは異なるのかもしれないという可能性を常に考えて、ちゃんとステップアップを続けれるようにいたいなっていうことは思っています。
Y:楽しみにしています。
T:ありがとうございます。

インタビューを終えて

インタビューを終えて

〈天牛美矢子略歴〉
1989年 大阪生まれ
2012年 京都市立芸術大学 工芸科 染織専攻卒業
2013年 同大学、大学院入学
2014年 ロンドン、Royal College of Artの、Visual Communication専攻に交換留学
2015年 京都市立芸術大学 大学院修士課程工芸専攻染織 卒業
〈個展歴〉
2014 『Field work/Yonder』ギャラリーKUNST ARZT、京都
2012 『WANDERLUST』ギャラリーKUNST ARZT、京都
〈グループ展歴〉
2014 “From one Island To another Island Then my Island” Hockney gallery, ロイヤルカレッジオブアー ト、ロンドン
Art Osaka 2014 アートでねむる、アートで目覚める ホテルグランヴィア大阪 ”Collection/Connection-マヤ、アンデス染織につらねる新しいカタチ” ギャラリー@KCUA
2012 ”Window Jack Project” 新風館、京都

編集 / 鈴木香澄(ART OSAKA事務局)

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