第5弾「アートで目覚めるvol.3」作家インタビュー:西太志

ART OSAKA2015 企画展「アートで目覚める vol.3」の作家インタビューも今回で最後となりました。 京都市立芸術大学の大学院で油画を専攻された西太志さんのインタビューです。インタビュアーは ART OSAKA 実行委員の森裕一さん(MORI YU GALLERY)。現在の制作スタイルにいたるまでのお話などを伺いました。

京都市立芸術大学作品展 展示風景 / 2015

京都市立芸術大学作品展 展示風景 / 2015

M:今年、京都市立芸術大学(以下:京芸)の大学院を卒業されたんですよね?

N:はい。

M:2年間どうでした?それまでは違う環境にいたんですよね。

N:元々は大阪芸術大学で学んでいました。大学院に入る前は紙に透明水彩で描いていました。映画が好きなので映画のワンシーンとか小説や漫画からイメージしたものに影響を受けていて、男の子が森にいて土を掘っているような光景であるとか、物語に出てくるようなイメージを描いていました。

M:紙に?

N:はい。大学院の入学前は誰に見せるでもなく狭いスタジオの中に一人で、制作していてすごい小さな規模で描いていたんです。それが大学院に入って、広い空間で描いた時に説得力がないなという感覚があって、素材とかモチーフに対してどういうアプローチをしていこうかと考えるようになりました。そこから板やキャンバスに描くようになったり、絵具も油絵具、アクリルなどを試していました。最近は、水性アルキド樹脂(アキーラ絵具)で描くようになりました。

M:2月の作品展はほとんどそうだったよね。

N:そうですね。水性アルキド樹脂は、透明水彩に近い感触もあるけど、油絵具やテンペラにも似ていて、 その触感が自分にしっくりきました。

M:描くのは早い方ですか?

N:水彩の時には、30号くらいで2ヶ月程かかっていました。絵の内容にもよりますが、今は同じくらいのサイズでも3日から7日程度で描くので前よりは格段に早くなりました。使う絵具の違いもありますが 、以前は構図を完璧に決めて描いていたんです。水彩は色も綺麗で構図も明確なので、絵としてのバランス は取れていたのですが、それがすごく表面的に見えてしまい、自分の中で求めているものと離れているように感じるようになりました。
そこから離れるために、身体性や即興性、物質感といったものに着目して描くようになったことが今の作品に繋がっています。

西太志

西太志

M:誰か影響された人はいますか?

N:2月の作品展で一番影響を受けたのはスペイン画家のフランシスコ・デ・ゴヤ(以下:ゴヤ)です。彼の「黒い絵」と呼ばれるシリーズに影響を受けていました。 ゴヤは宮廷画家として活躍していたのですが、「黒い絵」はその時とは違って当時の時代情勢や、自分の内面に迫った部分が描かれているんです。 しかもそれらの作品はゴヤが自分の家に飾る為に制作された絵なんです。そういった所にも惹かれて、自分も今の状況を切り取るような作品を描きたいと思い、作品展では意識していました。 見方によっては冒険しているようにも見えるし、別な視点からも見ることができるという点を自分の中では大事にしています。

M:フロイトの概念で不気味なものは家や日常の背後(裏側)にあるというのを聞いた事があってね。なんとなくそれと繋がるかなと思ったんですけど。

N:すごく自分の考えに近い事を言ってもらえた気がします。

〈立体の作品について〉

M:もう一つ気になったのは作品展で立体がありましたが、あれも絵画と同じようなコンセプトで制作しているのですか?

N:立体(陶芸)は、よりドローイングに近い感覚で制作しています。大学院 1 回生の夏休みの期間に、中学校でレジデンスをする機会があったんですけど、スタジオは大学にもあるのでいつものように絵を描くのは面白くないなと思って。 たまたま中学校には電気釜があって粘土も提供してくれるという話になったので、立体を作ってみようと思いました。丁度素材の変換というのも試していた時期だったので、いい機会でした。そこから、立体と絵画の関係も考えるようになりました。

M:粘土はやってよかった?

N:よかったですし、面白かったです。レジデンスの成果発表として展覧会があったのですが、家庭科室を使って、場所の特性もふまえて初めて立体のみで展示をしました。それが自分の中ではすごく絵画的な空間になったと感じていて。インスタレーションだけど自分の絵画の世界に近いというか。構図とか置き方も絵画のモチーフの配置に近くて、良い経験になりました。

M:作品展でもそれに近い事を言っていたよね。オブジェの置き方も絵画との関係を考えながらって。

N:はい。展示空間に入って全体を見た時に、絵画的空間に近いようなイメージで立体の配置をしています。一つの立体が複数の絵画と繋がっていくというか、絵画と現実を繋げる境界の役割として重要な作品になりました。

ART OSAKA 実行委員:森裕一(MORI YU GALLERY)

ART OSAKA 実行委員:森裕一(MORI YU GALLERY)

M:絵画と立体と両方見たときに、立体はつくりはじめたばかりなんだなという印象があって、一瞬違和感がありました。でも、後で作品を思い返した時に、西君の作品の部屋はすごく印象に残っているんです。それで、なんでなんだろと考えたときに、結局あのオブジェが効いてるんだなと。もっと作ればもっと立体がよくなるんじゃないかなという気がしたんです。でも「オブジェはまだこれからなんやろな 」というギャップは後で考えたらそれなりに面白くてね。それが揃ってくる時にもっと面白い相乗効果が生まれてくるだろうという気はしました。

〈絵の中の人物〉

M:西さんの作品には人物がよく出てきますが、あれは自画像なんですか?それとも自分とは違う他者なんですか?

N:自分の中で自画像なのかなと思った事もあったんですけど、やっぱり違うと思っています。誰かと言われたら、誰にでも当てはまるようなイメージとして客観的にも見ているし。でも自分に近い存在でもあるとも思っています。

M:それは、自分でもあり他者でもあるということ?

N:そうですね。

M:ちょっと前の作品で「鳥使いの沐浴」という作品がありましたが、あれもおもしろかったんだけど、具体的にどのような作品なんですか?

鳥使いの沐浴 / 2012

鳥使いの沐浴 / 2012

N:あれは透明水彩の頃に描いていたものです。前の年に 3.11 の震災があって、水を使う作品は慎重に扱おうと思っていたんです。でもそこからどうしても逃れられなくて、一枚は描こうと残した作品です。自分の中ではとても大事な作品です。

M:あれは他の作家からイメージを得たりしてる?

N:オフィーリアです。

M:人物の向きが逆になっていましたが、それは何か理由があるの?

N:一応その時は同じ方向にはしたくないと考えていました。オフィーリアは綺麗な作品だけれど、内情は彼女が狂ってしまって自殺してしまうという絵だったと思うんです。自分の作品はそうではなく「鳥使いの沐浴 」というタイトルで、死を連想させるだけではなく、生者の姿にも見えてほしくて、あまりグロテスクな部分だけが出ないように意識していました。

M:人物を描くってすごく難しいけど、描く作家はいっぱいいるでしょ。人物はおもしろいですよね。

N:そうですね、確かに。 僕は絵描きも好きですが、でも『人物』を描くというより、人物と場との関係というか現実と虚構が入り混じった 『場所』に興味があります。映画に影響を受けていて、中でもデヴィッド・リン チ監督の作品が好きなんです。特に「ブルーベルベッド」や「ツインピークス」には影響を受けました。人物の描写だけでなく、撮影される場や不穏な空気感など、観る側に委ねている部分が多い所も好きです。それもさっき森さんの仰っていた日常の背後の話とか、リンチの作品にはそういうところはあるかなと。 あとはコーエン兄弟の「ファーゴ」とか、事故などのふとしたきっかけで日常が変わってしまうという表と裏の関係に興味があります。

〈ART OSAKA について〉

M:展示する部屋は見に行きましたか?

N:はい。ホテルの中での展示ってなかなか出来ないので、難しそうだなと思いました。

M:あんまり気にせず、自分の思うようにやったらいいと思います。何をだすの?ペインティング?オブジェ?

N:両方だそうと思っています。ベッドが沢山あるので、それを活かして立体や絵画を配置しようかと。まだ考え中ですが大きめの絵画も新作を制作しているのでそれも展示したいです。

M:間違いなく言えるのは関西のキュレーターがちゃんと見に来るから。人の目に触れる確率は非常に高いと思います。見ている人はすごく見ているからね。自分を出せる展示が出来るように頑張ってください。

N:はい、頑張ります。ありがとうございます。

インタビューを終えて

インタビューを終えて

1983 大阪府生まれ
2006 大阪芸術大学 芸術学部 美術学科 絵画コース 卒業
2015 京都市立芸術大学 大学院 美術研究科 修士課程 絵画専攻 油画 修了
〈グループ展歴〉
2014
油画修士前期展 (京都市立芸術大学油画制作室/京都)
作品中!(ギャラリー16/京都)
2013
LOCA 展(京都市立芸術大学 油画制作室前廊下/京都)
AUTUMN HURRICANE(京都市立芸術大学大ギャラリー/京都)
超京都 2013 特別展示〈暗黙知〉(平成の京町家モデル住宅展示場 KYOMO/京都)
洛美展(京都市立洛友中学校/京都)
NATURAL SMELL(京都市立芸術大学油画制作室/京都)
2012
Äkkigalleria 17 –In the Earth, In the Sky(Äkkigalleria/ユヴァスキュラ)
Alkuluku -Japanese contemporary Art to Raahe(Galleria Myötätuuli/ラーへ)
〈受賞歴〉
2014 京都銀行美術研究支援制度 選定

編集 / 鈴木香澄(ART OSAKA事務局)

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