ART OSAKA 2014 フォトレポート第2弾

皆さまこんにちは、ART OSAKA事務局です。 第1弾のレポートに続き、フォトレポートブログ第2弾をお届けします。 このブログでは企画展とExhibition PLUSについてご紹介していきます。 それでは早速企画展のご紹介から。

Lucie & Simon『Silent world』

展示室の様子:Lucie & Simon

展示室の様子:Lucie & Simon 撮影:早川智彬

ART OSAKA が JEUNE CREATION とパートナーシップを組んで行う日仏若手作家交流企画の第2弾。
Lucie & Simonは、都市風景や日常生活を静謐で叙情的な映像と写真で表現している新進気鋭のアーティストで、今回が初来日。日本初となる発表を、このART OSAKA 2014で行うことが出来ました。 会期中は、作家が通訳を介して、来場者と積極的にコミュニケーションをとりながら作品を紹介しているのが印象的でした。

京都市立芸術大学『アートで目覚めるvol.2』

展示室の様子:京都市立芸術大学 写真奥真ん中:松平莉奈 写真手前左:髙木智子

展示室の様子:京都市立芸術大学 写真手前左:髙木智子 写真奥中央:松平莉奈 撮影:早川智彬

京都市立芸術大学とのコラボレーション企画で新人作家4名を紹介。 連日出展作家も会場入りし、多くの来場者の反応を直接感じる刺激的な機会になりました。 次の展示機会へ繋がる話もあったとか。今後の活躍が楽しみですね。

アート高雄inアート大阪2014

展示室の様子:ART 高雄

展示室の様子:アート高雄 撮影:早川智彬

フェアパートナーシップを組んでいる「アート高雄」のブース。Galerie Grand Seicle と Chuan Cheng Art Center が共同で展示構成をし、フェアのプロモーションを行いました。今度は、12月におこなわれる高雄のフェアにもART OSAKAのブースが出展予定です♪

大阪・ハンブルク友好都市提携25周年記念事業 『マリエラ・モスラー& ウエダ リクオ』

写真奥_ガラス面:マリエラ・モスラー 写真手前_立体:ウエダリクオ

写真奥 ガラス面:マリエラ・モスラー 写真手前 立体:ウエダリクオ 撮影:早川智彬

窓につけられているのは、マリエラ・モスラーのマスクシリーズ。作品の中には日本に着いてから制作、仕上げたものもあったそうで、それも現代美術の所以! 窓際の台の上に置かれている作品はウエダリクオの代表作である風シリーズのオブジェ。他にも映像や、風のコレクションが出展されました。

Exhibition PLUS

ART OSAKA 2014では、通常の展示室とは別に”PLUS”というカテゴリーを設け、個展形式やテーマ性を持たせた展示枠をつくりました。今回は出展ギャラリーの中から16のギャラリーがExhibition PLUSに参加されました。 通常の展示室とはまたひと味異なり、インスタレーションのような展示が数多く展開されました。

大﨑のぶゆき 個展 / ギャラリーほそかわ

大﨑のぶゆき 個展 / ギャラリーほそかわ 撮影:早川智彬

 

架菜梨案 個展 / ギャラリー工房 親

架菜梨案 個展 / ギャラリー工房 親 撮影:早川智彬

岩井知子 個展 / FUKUGAN GALLERY

岩井知子 個展 / FUKUGAN GALLERY 撮影:早川智彬

尚、展示風景の写真はflickerにまとめていますので、お時間のある時に是非覗いてみてください。 また、クロージングレポートもこちらにあります。 まだまだ暑い日が続きますが日常生活の気分転換に、このフェアを機に出会ったギャラリーへ足を運んでみてはいかがでしょうか。 来年はもっと深くフェアをお楽しみいただけますよ!

text:鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

ART OSAKA 2014フォトレポート第1弾

展示室の様子_ギャラリー301

展示室の様子:ギャラリー301 平面の作品:ユルキヤスヒト  中央の台彫刻:安見友太 撮影:早川智彬

こんにちは、ART OSAKA事務局です。ART OSAKAが閉幕して早くも3週間。 ご来場いただきました皆様、関係者の皆様へ運営側一同心よりお礼申し上げます。 早速ですが、ブログは2回に渡りフォトレポートをお届けします。 第1弾はフェア期間の様子を写真で振り返って参ります〜。

栗棟美里 作品 / テヅカヤマギャラリー 

栗棟美里 作品 / テヅカヤマギャラリー 撮影:早川智彬

7月11日(金)内覧会 フェア初日は天気予報では台風が関西直撃と予想され、どうなることかと思いきやそんな心配をよそに晴れ間のみえるお天気となり、多くの招待客の方々にお越し頂きました。夜にはカクテルサービスをおこない、ドリンクを片手に会場をゆっくりご覧いただきました。

会場風景

受付け前会場風景 撮影:早川智彬

7月12日(土)一般公開 一日目 ナイトビューイング 一般公開の土曜日になると、会場直後からどんどんお客様がご来場されました。夜は年々定着してきたナイトビューイング(19:00-21:00の時間帯)を開催しました。昼間の印象とは一味違う雰囲気の中で、作品を楽しめる特別な夜となりました。

ナイトビューイング風景:ウェルカムドリンク

ナイトビューイングの様子:ウェルカムドリンク 協賛:アサヒビール(株) 撮影:早川智彬

7月13日(日)一般公開 二日目 フェア最終日は、フランスの芸術団体 “JEUNE CREATION ” との交流プログラムで、この秋にパリで開催されるグループ展JEUNE CREATION に招待派遣される、若手作家1名を決める審査が行われておりました。

JC選考審査の様子

JC選考審査の様子 撮影:早川智彬

今回見事グランプリに輝きましたのは、奈良と東京にスペースを持つGallery OUT of PLACEから出展していた中島崇さんです。おめでとうございます。 中島さんは、Exhibition PLUSの部屋で大量の枕を繋げたインスタレーション作品を展示していました。フランスでの展示も楽しみですね。

JC最優秀賞に選ばれた中島崇氏のインスタレーション作品

JC最優秀賞に選ばれた中島崇氏のインスタレーション作品 撮影:早川智彬

今回のフェアでは、出展ギャラリーの展示も然ることながら、昨年に続くJEUNE CREATIONの審査発表、企画展の数の増加とそれに伴う関連イベントの開催、ホテルとのコラボ商品販売等でフェア全体に盛り上がりをみせました。

展示室の様子:Yoshimi Arts

展示室の様子:Yoshimi Arts 撮影:早川智彬

次のブログでは今回紹介しきれなかった企画展をご紹介致します。 (つづく)

text :鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

ART OSAKA 2014 企画展
出展作家インタビュー 『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2
髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm  ©Tomoko Takagi

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm ©Tomoko Takagi

《Trio》—この一年の制作について

松尾:今年も去年も、京都市立芸術大学の作品展では髙木さんの作品を拝見して、「あっ!」と印象に残るものがあるんですよ。あまり頭でいろいろ考えてというよりも、直感的に良いなと感じて入っていく事が僕自身は多くてね。コンセプトを聞いてなるほどと思う事もあるんだけど、やっぱりパッと見て「あーいいな!」と。

髙木:ありがとうございます。この一年間は、自分がどういう事をしたいのか、学部生の4年間でやってきた事との繋がりなどを言葉に置き換えていく作業が続いていたんです。2月の作品展では、それをやっと絵の具に置き換えて少し納得がいくようになってきたところでした。

松尾:じゃあ、コンセプトよりも、例えば、制作の技術的な事に集中されていたとか?

髙木:そうですね。色の事とか、絵の具の事とか、これまでは無関心だったところも掘り起こしてみたりして…。モチーフ自体は、何かモノを描きたいという思いは変わらずにあるので、それを抽象みたいに出来ないかなと思って。

松尾:身近なというか、京都で歩いているとモチーフになるものがある、と仰っていましたよね。

髙木:出来るだけカメラを持ち歩くようにしていて、「あーなんか気になる!」感じるものをいっぱい撮りためているんです。どうやら自分には、人が飾っているものとか、自分が並べたものではない状態の色の組み合わせに、「なんだこれは」と反応しているところがあって。それは描くモチーフを選ぶ基準にも繋がってきています。

松尾:作品展で出品されていた《Trio》という作品は?

髙木:これは、丸亀のお城の下でやっていた盆栽展の中で見つけた3体の人形の飾りが元になっています。普通に真面目な盆栽が並んでいるのですが、いくつかは不思議な飾りがされている盆栽もあったんですよね。なので、人形とかモノの位置関係はすごく忠実です。

松尾:不思議やな(笑)。

髙木:今は、同じモチーフを何枚か描き続けるように制作しています。一枚つくってから、次はもっとこの部分を伸ばそうとか、構図は縦にする方がいいかなとか、焦点のピント位置をずらしたりと、描いていく中で次のアイディアが具体的に現れてくる感じです。

松尾:色の使い方が独特ですよね。色目の濃淡がけっこう好き。

髙木:透明のメディウムに絵の具をちょっと混ぜて、白の下地にのせると透明色がぐわっと出てくるので気持ち良いんです。

松尾:モチーフを撮りためた写真にも、もともとカラーという色味があるじゃないですか。実際に描く時には、自分で目標としている色にモチーフの色を変化させて近付けていくのか、それとも、キャンバス上で偶発的につくりながら決めていくのですか?

髙木:描きながら目の前で混ざり合って、いい感じだなあと思う事ももちろんあるのですが、たいていは絵の具をあまり混ぜないので、この色をと自分が思うものを先に決めて描いています。最近は下地を白色ではなくピンク色か緑色の2パターンでつくり、その上に描き始めていくようにもしていました。

松尾:画面構成は、全く違う写真の場面から組み合わせてつくり始めてもいるようですね。

髙木:はい、それもやり始めています。描かれているものが何であるのか、パッと見えてしまう事から逃れたいと思っていて…。他にもシンメトリーな構図にしたりだとか、どんなふうに絵の具を動かして物質感をコントロール出来るのか、いろいろと試し中です。油絵の具は透明にも不透明にもできるし、一番薄い状態からすごく分厚いところまで幅をもたせられるのが…。

松尾:すごくフィットすると?

髙木:そうです(笑)。takagi_matuo

 

物がどう見えるのか、を考え直す

髙木:実は、いろんな大人の人に聞きたいと思っていることがあって…逆に質問させていただいても良いですか?

松尾:お、何かありますか?

髙木:えーと、学生くらいの時に、大人になったらいろんな事が全部分かるようになって、何でも理解できているようになるのかもって、思っていた気がするんです。そういうふうに思った事って、松尾さんにもありましたか?

松尾:まあ、あったんじゃないかな。子どもの頃とか、そう思っていたかもしれない。

髙木:で、でもどこかで全部は理解し切れないんだなと気付いた時には、どう思いましたか?

松尾:世界って広いなあ、って思った。僕ね、25歳くらいでこの仕事を始めて、最初はアートビジネスなんて自分で全部出来るんじゃないかって思っていました。漠然と、世界で一番になれるんじゃないかっていうくらい(笑)。それは大きな間違いだなというのは、人生もそうだけど、この世界も仕事も知れば知るほど深くなっていくわけ。子どもの頃は学校で一番だったら、世界で一番ちゃうか!ぐらいに思っているけどね(笑)。歳をいけばいくほど、自分の小ささを感じる。無力さというか、こんなもんなんやなーみたいになってくる。でも、それでいじけるんじゃなくて、もうちょっと頑張ろうってね。

髙木:続くんですね。

松尾:続くよ。

松尾:本当は結構ね、何でも分かった気になって天狗になっている人も居ると思うよ。でも人間って、「うわぁ、俺ってもっと頑張らな!」って思っている方がやる気が出るんじゃないかな?あと、周りの仲間や友だちを見て、「あいつも頑張っているから、俺も!」とかね。

髙木:この話とはあまり繋がっているように思っていただけないかもしれないのですが、最近、物がどう見えるのかという事をもう一回きちんと考えてみようと思っているんです。かつて浪人している時には「デッサンはこういうふうにするんだよ」と、既に出来上がっている方法でいろいろと教わったりもしたんですが、本当は物を認識するのってそういう事じゃないよなーと。自分が描いているものが、立体感や空間のパースペクティブをちゃんと出すというわけでもないので、改めて、じゃあ何なんだろう?と。

松尾:物の対象の見方として、どういうふうにしていくかという事は、作品を描くにあたっての一つの自分のスタイルでもあるだろうし、同時にコンセプトでもあるだろうし…。自分の精神のどこかにそういう思いを持っている事が、直接的では無いかもしれないけど、いずれ間接的にでも、髙木さんが描く何かに現れて出て来るかもしれないね。例えば、そういう自分の表現を文章や言葉に出来るのなら、出来るほうが良いし必要だと思う。

髙木: はい。やっておきたいですし、出来るようになりたいですね。どう見ようかなと、どう描こうかなとは、やっぱり自分の中で繋がっている事なので、模索中ではありますが…。それから、盆栽の中の人形もそうですが、人が飾っている物を描くのは、私にとってある種の理解できない事として興味を持っているからではないかと思うんです。世界の全てを理解し切れないのだとしたら、自分の身の回りの小さい関係を確かめていくしかないので、私は描いていく事で、もう一度世界のいろいろな物事を見ていくのだと思います。

松尾:来年春の卒業後、アーティストとして活動していくにあたって、具体的なイメージはありますか?

髙木:すごく漠然とはしていますけど、住むところと描くところをちゃんとする、というくらいでしょうか。いまは制作を集中してできる場所にいるので、描く内容と絵の具のことをずっとやってはいますが、なぜこれを描くのかという部分をまだまだ考えたいです。発表する場所は、気になったら何でもやろうという思いは常にあります。

松尾:「ART OSAKA」では、新作を?

髙木:はい。

松尾:ぜひ楽しみにしています。

髙木:ありがとうございます。
DSC_0838as

インタビュー収録:2014年5月12日、TEZUKAYAMA GALLERYにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

 

髙木智子 略歴

1989年千葉県生まれ。現在、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画在籍。
2014年京展にて市長賞・京都市美術館賞を受賞。昨年の『ART OSAKA』企画展にも出展。
個展:2014年ギャラリー恵風(京都)2013年ギャラリ−モーニング(京都)他/グループ展:2013年「アートアワードトーキョー」行幸地下ギャラリー(東京」他。

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 前谷康太郎×細川佳洋子(ギャラリーほそかわ/ART OSAKA実行委員)

ART OSAKA 2014 企画展 出展作家インタビュー 『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2 前谷康太郎×細川佳洋子(ギャラリーほそかわ/ART OSAKA実行委員)

前谷康太郎《further/nearer》2013|ビデオインタレーション|2分(ループ)、サイズ可変(スクリーンサイズ180×240 cm) |梅香堂(大阪)にて ©Kotaro Maetani

前谷康太郎《further/nearer》2013|ビデオインタレーション|2分(ループ)、サイズ可変(スクリーンサイズ180×240 cm) |梅香堂(大阪)にて ©Kotaro Maetani

《further/nearer》‐作品のバイオリズム

細川:私が最初に前谷さんの作品を拝見した時は、まだ京都市立芸術大学(以下、京芸)には入学されていなかった頃だったんですよね。既にテクニカルな事も勉強して完成度の高い仕事をされていて、抽象的な映像作品でしたし、強く印象に残りました。その後に、なぜ改めて京芸に入ろうと思われたのでしょう?外語大に在籍されていた時からビジュアルアートには興味があったのですか?

前谷:それは大学に入る以前からですね。ただ、進学校の高校だったので画塾に行く時間は無かったですし、父親にも「美大」とポロっと言ったら「ややこしいから、とりあえず外語大に入りなさい。美大に入ってもいいけど、その後にしなさい。」と言われて(笑)。

細川:では、お家の環境はとしては、美術や美大に対しても寛容だったんですね。

前谷:はい、そうだと思います。

細川:映像の構造的な理論について私は詳しく分かっていないところもあるのですが、ずっとこれまで見て来た中で、前谷さんの作品は映像そのものというよりも、一種の宗教的なものに包まれるような圧倒感があります。例えばロスコーのような…そういう絵画的なイメージにも当てはめてみたいなと思うのですが。

前谷:たしかに動画である一方、没入すると静止画を見ているような気分になるところがあります。変化がとてもゆっくりで、残像が目に焼き付くせいだと思いますが、その目に焼き付いた静止画としての残像と、スクリーン上で進行している動画が重なる感覚というのは、他の映像作品でも絵画作品でもないものだと、他の方からもつい最近そういう感想をいただいて、そんな側面もあるんだなと気付かされました。

細川:一つの鼓動というか、祈りと近いような静かに思考しているリズムとすごくリンクするような作品というか…。前谷作品のその動きは、仏教的な感じでもありますよね。私には、やはり生命のビビットなリズムじゃなくて、その狭間の沈思黙考の時の鼓動や脈と、前谷さんの映像作品とが同期するように感じられます。もっと極端に言えば、生と死の中間くらいのところの脈。

前谷:ありがとうございます、すごく嬉しいです。僕は小さい頃高野山で育った事や、仏教学者である父親の存在もあって、家では読経をして内省する時間を毎日持つようにしています。こういった習慣と作品のもつ波長との間には、潜在的なつながりがあると思っていて、それを見て取っていただけたというのは、とても感動的です。 関東のあるキュレーターの方が個展を見に来てくださった時、お忙しい時期ですごく疲れ果てていらっしゃったのですが、その状態の彼女自身のバイオリズムと作品《further/nearer》が鏡像のようにリンクし、浄化(カタルシス)を感じたそうです。細川さんのおっしゃった「生と死の中間くらいのところの脈」というのは、まさにこの方の例にあてはまる気がします。

細川:ある種すごく生命的なんですよね。

前谷:東洋思想にはもともと興味があって、外語大受験の際も最初はヒンディー語専攻を考えたのですが、父親が読めないアラビア文字が読みたいという、ちょっとした反発心から(笑)ウルドゥー語を選択しました。

細川:なるほど。そういうアジアの言語を選んでそれが今の前谷さんのお仕事に何か繋がっているというのはありますか?

前谷:あると思います。今回の『ART OSAKA』でも出展させていただく《further/nearer》は、焦点外の領域に目を向けた作品でして、世界の認識の仕方としてはかなり東洋思想的だと言えます。般若心経の中にも「それが何であるか、認識できるものばかりが全てではない」と説いている一説があります。実体が見える世界を、焦点があっている領域だとすれば、この作品はその世界と垂直に交差する光の可動域(実体の見えない、焦点外の世界)を表しています。そして多くの場合、前者よりも後者の方が広い領域を持っています。また、これは焦点の話よりも大きな話になってきますが、私たちの目も常に、見えていない世界の方が広いはずです。そういった領域の光を感じてもらうというのが、この作品の大きなテーマです。 maetani_hosokawa2

光を集める-映像の素材として

細川:以前に、後々田さん[※]が「これからあいつは光を集めに行くんだよ」と、前谷さんの事を仰っていたのですが、撮影のためには街の中へと光源を拾いに行かれるのですか?

前谷:そうですね、車で走って。そのお話しはちょうど昨年に光のロードムービーを撮っていた頃の事ですね。車の後ろに、敢えて不完全な像を結ぶようなオブスキュラを積んで走って撮影をしていました。 一番最初は、このオブスキュラと同じ構造の部屋を用意して、そこで夕日の光を採集していました。この、太陽光をサンプリングしたビデオインスタレーションからスタートして、その延長線上でいろいろな人工の光も使ってみたりしています。 外語大で言語学を勉強していた過程で、言語の持つ分節性は、多くのカット構成から成る映像においても見て取れるなと気付いて…音声言語における、音素に当たるものとして太陽光などのよりプリミティブな光を拾ってきて、それを構成要素に使おうと思ったんです(a light in memory(2011))。人工的な光を使う場合でも太陽光を想起させるような色彩を意識しています(further/nearer 2012, 2014(2012,2014))。

細川:暖色系の赤、オレンジ、黄色以外にも、ブルーの光の色の作品もありましたよね?

前谷:それは青空から採ってきた光ですね。

細川:なるほど。ちなみに、話が前後するのですが、後々田さんとの関わりは前谷さんが2010年に初めて此花メヂア(大阪)で個展をされた頃からだったのですか?

前谷:そうですね。その時は会って2回目くらいだったのですが、すごくダメ出しをされて、しばらく凹んで、個展終了後はしばらく梅香堂に行けなかったのですが、久しぶりに行ったらすごく喜んでくれて、「メヂアでの展示、うちでもう一回やらないか。新作じゃなくていい、ちゃんと見てもらえる形にしよう。」と言っていただいて実現したのが2011年の「(non)existence」展になります。

細川:今年2月の大学での作品展では、前谷さんの作品は一部屋をすべて使ってスクリーンに上映されていて、とても説得力がありましたよね。

前谷:実はそうした展示方法についても、後々田さんに強く勧められていた事でもありました。ただ、「やれ」とだけ言っておらんようになってしまったので、僕としても本当にやらざるを得ない状況になって…(笑)短い設営期間でのつくり込みはいろいろと厳しかったですが、自分の中でも大きなキーとなる展示になりました。

※後々田寿徳:大阪市此花区のアート・スペース「梅香堂」の堂主。2013年12月に永眠。福井県立美術館、ICCの学芸員や大学講師を経て、2009年11月に梅香堂を開設。築60年の倉庫を改修したオルタナティブ・コマーシャル・ギャラリーで、気鋭の若手作家を紹介し注目を集めた。  

前谷康太郎《further/nearer》2014|ビデオインタレーション|京都市立芸術大学・作品展にて ©Kotaro Maetani

前谷康太郎《further/nearer》2014|ビデオインタレーション|京都市立芸術大学・作品展にて ©Kotaro Maetani

これからの制作について

細川:今後は、どういう展開を考えておられますか?

前谷:とりあえずは目先の展示に追われていて何も考えられていないのですが、海外へ出た事が未だ無いので、挑戦したいなと思っています。

細川:もし行くとしたら、どういう国に?

前谷:美術をやる環境としてはドイツやイギリスが良いのかなとも思うんですが、制作そのものの展開を考えると、北欧などの白夜や砂漠の蜃気楼など、日本では到底見ることの出来ない光を使って作品を作れたらなとも思います。

細川:それは良いですね。他にも夕日の強烈な大自然の地だとか、たとえその地で作品発表が出来なくても、自然観や死生観が欧米とは全然違う所へ行かれる方が前谷さんの作品には上手くフィードバックされていくような気がします。

前谷:作品にとってはたぶん、本当に仰る通りです。

細川:前谷さんの強みの一つは、日本人である私たちが祈りに近いような状況にある時に呼応して、ヴァイブレーションを起こさせるという面白さだと思うので、そういう土壌のある日本以外の国で独自の表現をますます高めて無敵になっていって欲しいとも思います。期待していますので!

前谷:ありがとうございます。   DSC_0267as

インタビュー収録:2014年6月2日、ギャラリーほそかわにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

前谷康太郎

略歴 1984年和歌山県生まれ。2008年東京外国語大学、2010年IMI/総合映像大学、2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了。個展:2013年 ICC(東京)、梅香堂(大阪/’11)、2012年CAS(大阪) 他 / グループ展:2014年「Future Tense」ヨシアキイノウエギャラリー(大阪)、2013年「Art Court Frontier」アートコートギャラリー(大阪) 他。

ART OSAKA 2014 の楽しみ方 鑑賞を超えて

ART OSAKA2013会場風景_ギャラリー空

ART OSAKA2013会場風景_ギャラリー空

今回のブログではもう目前に控えている、ART OSAKAをより一層楽しんで頂くためのAtoZをお届けします。

と、その前にそもそもアートフェアってなに??というところからお話しましょう。
アートフェアでは、普段美術館で見るような作家の作品が目の前に置かれ、作ギャラリストや作家が身近に作品を紹介しています。何と言ってもの醍醐味は、作品に価格が付いており、気に入った作品があればその場で購入出来ることではないでしょうか?

A. そもそもの所要時間は?
ART OSAKA では、53軒の現代美術ギャラリーが、ホテル客室をアートの溢れる空間に変身させています。企画展示やExhibition PLUSを合わせると、73roomで展示が行われています。1部屋3分でも、3時間では回りきれないボリュームです。
事前にパンフレットなどを入手できるのなら、予習をして、的を絞ってギャラリ−を巡るのもオススメですし、休憩を挟みながら時間をかけて巡るのもいいですね。

ART OSAKA2014公式リーフレット

ART OSAKA2014公式リーフレット

B.気になる作品があったら、実際に話を聞いてみよう。
例えば「この作家はどんな作家さんですか?」と。スタッフが経歴や作品のコンセプト(テーマ)などをお話してくれます。作家がその場にいた場合は直接お話することもできます。他のお客様と接客中などでなかなかタイミングがない時は、近くにポートフォリオと呼ばれる作家のファイルがあるかもしれません。手にとって自ら調べてみるのもいいですね。

C. 赤や、青いシールは何を意味する?
作品タイトルなどが書かれたシートに、赤いシールが貼ってあるのを目にすることがあります。 それはその作品が売約済みであることを意味します。青いシールは商談中です。
貴方がいいと思った作品を、他の誰かもいいと思われた証拠です。

D. 支払いはいつのタイミングでするもの?
作品を購入するというのは、はやりドキドキするものですね。でも購入したい作品に出会った時は、通常のお買い物のように「これをください。」とスタッフにお声がけ下さい。
支払いのタイミングは、小額でしたらその場の現金支払いで(ギャラリーによってはカード決済可能)、後日請求書払いも一般的です。
作品のお届けは、ご入金後、宅急便や美術専門の運送会社などがお届けします。
お近く場合、ギャラリストが作品設置も兼ねて直接納品に伺うことも可能ですよ。気軽にご相談下さい。

E. 疲れて来たら・・・・
ART OSAKA 2014 の入場チケットは、当日に限り再入場可能です。一旦会場を離れ、お昼休憩やお茶をして戻って来るのも良いアイディア!
ホテル19階にあるバー「サンドバンク」とラウンジ「リバーヘッド」では、アーティストとコラボした期間限定のカクテルとスイーツが販売中。詳細は前回のブログに記載しています。
ART OSAKA 2014 の入場チケットの提示で、10%の飲食代の割引サービスもおこなっております。

F. スマートにフェアを楽しむ
最後に、アートフェア来場の際の注意事項を少しお話します。
会場は多くの来場者で賑わい、隅々まで作品が展示されています。誤って作品に触れない為にも、荷物は軽くコンパクトにするのがオススメです。
作品の写真撮影は、著作権保護の関係から基本的にNGです。ただし、ギャラリーによっては撮影許可をしていますので会場内のサインに従って下さい。その場合もむやみに撮影するのではなく、一言断って撮影するのがアートフェアのマナーですよ。

ART OSAKA2013会場風景

ART OSAKA2013会場風景

以上、ART OSAKAを楽しむためのAtoZをお届けしました。
皆さまのご来場、楽しみにお待ちしております。

Text :鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

ホテルグランヴィア大阪×ART OSAKAコラボ商品完成!

作品画像 左上:岡本啓、右上:川北ゆう、下:現代美術二等兵

作品画像 左上:岡本啓「34.768061_135.49329」、 右上:川北ゆう「2013.9.27」、 下:現代美術二等兵「未完の大作」

皆さまこんにちは。
6月中旬になり、ART OSAKA開催まで残り3週間をきりました。
事務局ではフェア開催に向けて着々と準備が進んでいます。
今年のART OSAKAは会場となるホテルグランヴィア大阪とコラボして、オリジナル商品を販売いたします!
ホテルパティシエ・バーテンダーとART OSAKA出展アーティスト3名(ユニット)とコラボレーションして作り出されたオリジナルカクテル&スイーツが実現しました。

今回選ばれた3名の気になるアーティストはというと・・・

岡本啓(Yoshiaki Inoue Gallery)カクテルコラボ
印画紙の上に直接現像液や光を用いて、色彩豊かな色や形を浮かび上がらせるという独自の手法で作品を制作しています。

川北ゆう(The Third Gallery Aya)カクテルコラボ
タイルに絵の具をおき、水を用いて絵の具を定着させる手法で作品を制作しています。動きを留めない水の流動的な流れがひとつひとつの作品の顔を変えていきます。

現代美術二等兵(MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w)スイーツコラボ
お菓子の中の駄菓子のように現代美術の中に駄美術が存在してもいいのではという発想をもとに、クスリと笑える作品を作り続けています。

打ち合せ風景

打ち合せ風景

上記3名のアーティストに声をかけ、5月中旬からホテル側と打ち合わせをおこないました。
両者の意見交換をおこない改良に改良を重ね、ついに商品が完成いたしました!

その商品がこちらです。

〈カクテル名「view」:岡本啓×岩本龍弥(バーテンダー)〉

カクテル「view」

デザイン監修:岡本啓 制作:バーテンダー 岩本龍弥 協力:Yoshiaki Inoue Gallery・ART OSAKA実行委員会・ホテルグランヴィア大阪 写真:待夜由衣子/Yuiphotop

比重の違う素材を使用し、視点や見方(view)で変化する様々な色合いをお楽しみいただけます。色の変化で味も変わるのでそちらも注目。グレープフルーツを用いておりフルーティーな味わいは暑い夏を涼しげにするにはぴったりです。

〈カクテル「清流」:川北ゆう×大崎寛惟(バーテンダー)〉

カクテル「清流」

デザイン監修:川北ゆう 制作:バーテンダー 大崎寛惟 協力:サードギャラリーAya・ART OSAKA実行委員会・ホテルグランヴィア大阪 写真:待夜由衣子 / Yuiphotop

川北氏の作品が持つ清らかな「水」のイメージからつくられたカクテル。不規則に広がる青い流れの拡張と波紋の余韻を楽しんでいただけるよう、ブルーのシロップをお客様自身で注いで頂きます。透明とブルーの色合いで見た目は爽やか、味も女性に飲みやすくつくられております。

〈スイーツ「プラモすいーつ」:現代美術二等兵×西山満雄(パティシエ)〉

スイーツ「プラモすいーつ」

デザイン:現代美術二等兵 制作:パティシエ 西山満雄 協力:MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w・ART OSAKA実行委員会・ホテルグランヴィア大阪 写真:待夜由衣子/Yuiphotop

プラモデルのようにスイーツを部品に見立てた作品。お客様自身で自由にスイーツを組み立ててお楽しみいただけます。タルトにはパッションフルーツのクリームやムースが用いられており、夏を感じていただけます。

初の試みとなる今回のコラボ、どのような商品が生み出されるのか、
わくわくしておりましたが、素敵な商品が誕生しました。
―――――
<コラボ商品情報>
カクテル
販売場所:ホテルグランヴィア大阪19階 BAR「SAND BANK」
期間:7月1日(火)~7月13日(日)
価格:1,850円(税金・サービス料込)
取り扱い数:1カクテル毎 各日15個

スイーツ
販売場所:ホテルグランヴィア大阪19階 Lounge「River Head」
期間:7月11日(金)~7月13日(日)
価格:1,850円(コーヒーor紅茶、税金・サービス料込)
取り扱い数:15セット

※フェア会期中に限り、ART OSAKAの入場券のご提示で優待料金でご利用いただけます。
【優待価格】カクテル:1,850円→1,480円、スイーツ:1,850円→10%off
―――――

暑い夏の日のひとときに、
フェアでちょと一休みしたい時に、19階へ足を運んで
期間限定・数量限定のコラボカクテル&スイーツをご賞味ください。

Text :鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 長谷川由貴×井上佳昭(ヨシアキイノウエギャラリー)

 

長谷川由貴《密やかな幻視》2014|油彩、キャンバス|194×324cm ©Yuki Hasegawa

長谷川由貴《密やかな幻視》2014|油彩、キャンバス|194×324cm ©Yuki Hasegawa

《密やかな幻視》

井上:京都市立芸術大学(以下、京芸)の作品展で、長谷川さんの《密やかな幻視》をはじめ数々の作品を拝見した時、こんなに森の深い所は日本ではそんなに無いので、オリジナルでイメージした像をつなぎ合わせた想像上の森を描いているのかなと思いました。作品からはすごく強い磁場のある、且つやわらかいオーラを感じて惹き付けられました。

長谷川:ありがとうございます。

井上:ご自身で行かれた沖縄の久高島を描いていた事は後から資料で知り、自分でも調べてみたら、すごい所なんですね!僕も沖縄は好きで何回か行っていたけど、久高島のような聖地がある事を初めて知りびっくりしました。琉球王国の中の一番大事な所だったみたいですね。

長谷川:そうですね。あの島を作ってから沖縄本島が出来たと、神話の成り立ちからそうなっているので、すごく重要な場所であるようです。

井上:男子禁制の場所もあるとか。

長谷川:この久高島自体、母系一族が権力を持ち、男性よりも女性の方が共同体の中で出来ることが多かったそうです。

井上:男は外で働いて?

長谷川:はい、島に残された女性同士でさらに共同体を作り、彼女達が祈りを捧げたりする場所が重要な聖地になっています。ここは何か違うなと感じる場所がたくさんあって、写真もいっぱい撮って帰ってきました。それから詳しく調べていったら、昭和の頃には岡本太郎さんもこの島には行っていたと…。

井上:そうそう、雑誌などに発表されて、実はそのために風葬が無くなったそうですね。

長谷川:これはもの珍しいんだと島の人達が気付いてしまったせいで、いくつか取りやめになった風習もあるみたいです。そのせいか、あまり観光には積極的じゃないのかなと、ちょっと思いました。

DSC_0289as-2

 

アーティストとしての原点/体験を見せたいという事

井上:長谷川さんはどうしてアーティストを目指そうと思ったの?

長谷川:私はずっと絵を描く事が好きだったので、漠然と芸大に入りたいと小さい時から思っていました。両親がそういう学校があると教えてくれて。芸大に入り美術教育を受けていると、他の事に全く興味が向かなくなっていって、アルバイトやいろいろと体験もしてみるんですけど、やっぱり長時間は出来なくて。制作している時だけは、ご飯を我慢してでもいくらでもやろうと思えるんですが。

井上:絵はものすごく上手かったの?

長谷川:どうなんでしょう…。

井上:僕も絵は好きで、小さい時には皆と一緒でマンガとか描いていたりしていたけど、どうしても勝てないなと思う上手な子達がやっぱりいたからね。他のアーティストに聞いても「自分はずばぬけて上手かったです」って言うよ。

長谷川:私はあまり活発なタイプではなかったので、一人でずっと絵を描いてるのが楽しいというのもありました。実家は大阪なのですが、わりと田園地帯の場所で、小・中学校に行く時も田んぼ道をずーっと歩いて行っていました。電灯があると稲の発育が悪くなるので、夜もライトは点々としかなくて…。学校から帰って来る時など、太陽が沈んで空の色がずうっと変わっていって、星がだんだんと見えてくる様子を、何だか不思議な感じがするなぁと思いながら見ていたんです。その後そんな事はすっかり忘れていたのですが、聖地のような場所に行くようになって、あの時に感じていた不思議な感覚を思い出すようになりました。たぶんその幼い時が、自分の中にある回路のようなものが目覚めた原点だったのではないかと。

大学院を含めて京芸に通っていた6年間は、ずっと自然の持っている超越的な力というものに興味があって、それを追い求めてマニアックな神社に日本中あちこち行って、神秘的とはどういう事なんだろうと体感しながら作品制作をしてきました。自然の力というものと、その体験を見せる事が自分の中のコンセプトであるというか、やっぱり体験を見せたいという事がずっと一貫してある感じですね。

井上:それはアートとして、非常に重要な部分じゃないかなと思いますよ。

長谷川:日本の古代の自然信仰や神道などからテーマを持ってきて描いていた時期もありましたし、遠野物語を読んで民俗学的な伝承から作品を描いてみるとか、もっとキャラクター的なものが出てくる作品も描いたりしていたんですが、突き詰めていくとどの時代も結局は、自然を人格化していたり、こういう現象はこういう神様という風にして名前を付けていたりするだけだなと思ったので。それらの根本として、日本各地に残っている聖地のように言われている場所に実際に行ってみて、其処がどうであったかを描くというのが、今の一番のテーマですね。

 

『ART OSAKA 2014』に向けて

井上:今回、作品を選ばれてどのように感じましたか?

長谷川:今まではギャラリーや美術館とか、美術の場所のために飾る前提で制作をしてきたので、今回はホテルという環境をいただきもっと生活に近い場所に作品があっても良いものだったんだと、考えるきっかけになりました。

井上:ホテル自体、旅行に行った人がそこで生活する場所とも言えるからね。長谷川さんの絵があって全然おかしくないし、特別な場所を描いているアートの素敵なオーラをもらえるならば、そのホテルに泊まる価値も上がるよね。ちょうど今、このギャラリーで展示している井上廣子さんは、森を通して命の循環や自然と人間との共存の歴史を表現し未来へのメッセージとして残そうと、彼女の考える「森」をインスタレーション作品として表現しています。長谷川さんの作品も、久高島の森を作品に描いて見せてくれる事で、僕らが知らなかった場所に新しく気付かせてもらうという、アートにとってすごく大事な所が共通しているんじゃないかなと思います。

長谷川:全国的にも、時代によって社殿を建て替えてしまった神社とか、歴史が積み重なっていくうちに忘れられてしまっていく場所がたくさんあって、不必要な情報を取り払いながらどこまでプリミティブなものに近づけるかという事をずっと大切にしようと思います。

hasegawa-inoue-2

 

自分が「パワーがある!」と思ったものを

井上:最後に、これからの展開とどんなアーティストになっていきたいか、教えてください。

長谷川:そうですね。作品から何かが伝わるという事が一番重要だと思っているのですが…。でも、モチーフにしている場所に人を連れて行って直接体感してもらう方がいいんじゃないか、という部分を超えられる作品が自分にはまだ出来ていないので。私自身の体験を通じて描かれた絵と両方を比較した時、どちらも良いなと思えるような状態になっている作品を一番に目指して、それがとにかく出来るようになりたいと思っています。なので、自分が「パワーがある!」と思ったものをどれだけ画面に落とし込めるかをずっと研究して、描き続けていきたいです。

井上:アートというのはコミュニケーションの手段でもあるので、僕らの知らなかった場所を絵画として見せてもらって、その中に長谷川さんを通じて込められた何かを感じて、自分もまたそこに行きたいと思うのは素敵ですよね。

長谷川:私の作品を見ていただいて、さらにはその場所に行ってもらった時に、私が「あっ」と思ったあの回路みたいなものが、見た方の中にも通ればいいなと。皆の体の中でどこかに眠っているはずの神経みたいなものを呼び起こせたらと思います。いずれは外国のいろいろな土地も見て、日本との違いをどう感じるのか、その土地ごとの神聖な場所、いろいろな宗教における重要な場所も巡ってみたいという思いもあります。

井上:ぜひとも、これからもがんばって描いて、いろんなものを見せてください。『ART OSAKA』での展示も本当に楽しみにしています。今日はありがとうございました。

長谷川:ありがとうございました。

インタビュー収録:2014年5月2日、ヨシアキイノウエギャラリーにて 編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

インタビュー収録:2014年5月2日、ヨシアキイノウエギャラリーにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

 

長谷川由貴略歴

1989年大阪府生まれ。2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。2014年「punto」オープンスタジオ(京都)、2013年個展「あなたが私のすぐそばにいることを本当はとてもよく知っていた」京都市立芸術大学小ギャラリー(京都)、グループ展「△のリンゴ-この世界を変える4つ目のリンゴについての仮説-」StudioJ(大阪)他。

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 松平莉奈×加藤義夫(加藤義夫芸術計画室/ART OSAKA実行委員)

DSCF4339w

 

私の「日本画」とは

加藤:『京都市立芸術大学アートで目覚めるvol.2』展の準備のために、今年2月の京都市立芸術大学作品展へリサーチに伺わせていただいたのですが、その時、松平さんは圧倒的に上手いからびっくりしたんですよ、ずば抜けていたので。

松平:ありがとうございます。

加藤:『ART OSAKA』は、コンテンポラリーアートと言われる現代美術をメインに展開するアートフェアです。そこで、日本画家としての松平さんに敢えてお伺いしたいのですが、現代美術に対してはどんなイメージを持っていますか?好きな作家などはいるでしょうか?

松平:一番好きなのは、高嶺格さんです。あとは、ソフィー・カルさんとか。

 加藤:彼らの作品は琴線に触れるというか、いいなーっと思うんですか?

 松平:人を扱っている作品だったり、物語性が強い作品が好きですね。物語ということについては、最近すごく気になっていて、自分の中で必要としているんだと思います。

加藤:ポートフォリオを見せていただいて、エゴン・シーレやウィーン世紀末の絵画をイメージさせる画風でいらっしゃったんですね。そもそも彼らは琳派に影響されているので、当然の如くかもしれません。しかしこの一年間に松平さんの制作スタイルは、より日本画的な手法や方向に打ち出していくよう大きく変わったように見えますね。
松平さんは、数年前のインタビューでは「自分の中の「日本画」というのを1つ見つけて、そこから日本画の良さも含めて発信していこう」と仰っていましたが、実際に勉強を重ねた今、あなたにとっての日本画とはどのような存在と言えると思いますか?

松平:今は「日本画」と敢えて自分で名乗る事で、これまでずっと続いてきた絵画であり伝統とも繋がるという意味で、こだわってみようと思っています。時代は違うけれど同じ立ち位置でいるんだ、と

加藤:日本の大和絵から続くような、日本画の流れの中の脈々としたものを受け継いで現代に、と?

松平:そうですね。日本の絵師達はずっと横のつながり持って、外の世界を見ていたわけで、そういうものの見方をしていきたいと思っています。「日本画」と名乗りながらも、現代美術の分野で活動している方々と同じように世界を見て、自分の技法で作品に落とし込み、シンプルに絵を描くという当たり前の事をしていきたいんです。                この一年で、自分では何が変わってきたかというと、日本画の素材に一番合う、素材が活きる描き方を探していくうちに自然とここに行き着いて、すなわち伝統的な描き方に還っていくことになりました。

加藤:なるほど。その立ち位置から、ご自身の「日本画」の未来についてはどういう風に考えておられますか?

松平:最近の考えでもいいですか?

加藤:もちろん。

松平:特に私が共感するのは歴史画家なので、史上のある場面を絵図の中に、いろいろな物語性を込めて、その時代々々の作家の思想も造形的に表していけたらと考えています。

松平莉奈《一休森女伝》2014|紙本着色|137.9×76.5cm, 137.9×46.4cm, 137.9×71.0cm ©Rina Matsudaira

松平莉奈《一休森女伝》2014|紙本着色|137.9×76.5cm, 137.9×46.4cm, 137.9×71.0cm ©Rina Matsudaira

《一休森女伝》

加藤:では、大学の作品展に出されていた《一休森女伝》には、どのような松平さんの思想が込められているのでしょうか。

松平:この作品では、まずマイノリティーについて描きたいという思いがありました。私がコンセプトとしている事は、他者という存在をどこまで想像するか、なのです。自分と他者との間の距離感に興味を持ちながら制作していて、人と人との関係にずっと興味があったので、実は去年の夏から半年間、身体障がい者の方の介助の仕事を始めました。抱き上げたり、体を支えたり寝かせたり、仕事の間はずっと身体と身体が近い状態でその方と接していろいろな動きをします。相手のバックグラウンドや指示を洞察して、自分はこういう行動によって応えようと考えていく。そういう仕事場を経験しました。

加藤:他者というのは、自分と誰かというところの距離感なのでしょうか。それとも差異という意識が強いのですか?

松平:他人の事は完全には理解出来ない、理解し合えない存在だという事を前提に関係を築いていく。それが今後はより必要なのではないかと思っています。今はインターネットもあるし、知ろうと思えばどこまでも情報を追って知っていけるような錯覚に陥りますが、実は物理的な距離が近くても絶対に解り合えない方が自然ですよね。日本画の場合、たとえば線が一本にまとまっていたり、一つの面に形を納めたりだとか、ものすごく表現が限られていて、抑えられている。その中で私は何を語れて、人は何を見て取るのだろうかと。そこに、私が「日本画」と呼んでやっていくことの意義も感じています。

加藤:よく分かります。

松平:この《一休森女伝》に登場するのは、もちろんあの有名な一休さんと、森女との二人です。一休は晩年の10年間ほどを、森女という目の見えない女性と共に暮らし、彼女に菩薩を見るまでに神聖化していたと言われています。たくさんの詩や衝撃的な愛の描写に至るまで、さまざまな記述が残され今に伝わっているのですが、でも森女の方はどうだったのか?彼女の心中に深く降りていった形跡や文献は全然無いんです。それからいろいろと調べていって、森女が描かれた絵が一つだけ、《一休宗純と森女図》という掛け軸が正木美術館にある事を知りました。円相図として一休が上の方に描かれていて、円の外側の下の方に、上げ畳に森女が座っているという絵です。視線は互いに合っていないし、円の内と外という構図からも、2人の間にはすごく断絶があると一目で分かって、「ああやっぱり」と思いました。そして、この絵を描きたい!と思い付きました。文献が少ない分、私の中では森女の方がすごく想像してしまうというか、共感出来る存在だと思えたので、彼女を主役にしています。

加藤:松平さんが「一休と森女」という過去の物語を咀嚼して、自分の世界観を一つここに出そうとされたんですね。

 

matudaira-katou-2

 

『ART OSAKA』と、これからのテーマ

加藤:今回の『ART OSAKA』での展示では、ちょうどこの部屋を使う予定なんですよね。

松平:はい。今日は下見も兼ねてこのホテルに初めて来させていただいて、すごくきれいで心地良い空間だと思いました。この空間と、絵のある形という両方の心地良さを、来てくださった方々には目で見て体感していただけたらなと思います。足を踏み入れるだけで光が差し込んで、ハッとした気持ちになると思うので。

加藤:さきほど、ご自身の日本画の未来についてお伺いしましたが、具体的に考えておられることはありますか?

松平:今は、それこそ一休の時代であったり、すごく中世に興味があります。

加藤:その辺りの事は調べたり、研究したりしようと思っていると?

松平:江戸時代以前の日本の絵画の中で行われてきた表現がすごく新鮮で、今もう一度この心境というものが必要なのではないかと。感覚的でしかないんですがそう考えています。夢と現実の境目など、そういうものを単純に記号的に分けて考えている事を見直したいというか…。それが、次のテーマになっていきそうです。

加藤:それはぜひおもしろそうです。これからも応援したいと思っています、ぜひ頑張ってください。

松平:ありがとうございます!

インタビュー収録:2014年4月27日、ホテルグランヴィア大阪・6210号室にて 編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

インタビュー収録:2014年4月27日、ホテルグランヴィア大阪・6210号室にて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

松平莉奈略歴

1989年兵庫県生まれ。2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画修了。2014年「punto」オープンスタジオ(京都)、個展「未だ見ぬ熱帯」ギャラリーモーニング(京都)、2013年シェル美術賞展2013入選、京都銀行美術支援制度 2013年購入作品選抜、グループ展「△のリンゴ-この世界を変える4つ目のリンゴについての仮説-」StudioJ(大阪)他。

フェア開催に向けて

0419_01

写真_下見の様子

 寒かったお花見シーズンもあっという間に過ぎ去り、日増しに春の陽気が続く今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、今回のブログは、先日行われました展示場の下見の様子について、4月からART OSAKA 事務局スタッフをしております、新人・室谷がレポートさせていただきます。

4月14日(月)上着を脱ぎたくなるほどの暖かな日差しの中、「ART OSAKA 2014」の会場となりますホテルグランヴィア大阪26階にて客室等の下見がおこなわれました。下見は、4月と5月の2回にわたって開催されます。今回は、約30人のギャラリスト・アーティストの方々がお集まりくださいました。

7月のフェア開催まであと3ヶ月足らず。一時間ほどの限られた時間の中、みなさまは部屋の広さや家具の配置などを入念にチェックされ、また、ホテルスタッフの方々やART OSAKAスタッフとも展示方法の相談や家具の移動等について打ち合わせていきました。

0419_02

写真_客室下見の様子

0419_03

写真_客室の様子

会場となりますホテルグランヴィア大阪はJR大阪駅直結の利便性の高いホテルで、「ART OSAKA 2011」からご協力いただいております。26階からの眺望はすばらしく、ナイトビューイングでは、夜景とともにアートをご鑑賞いただけることもART OSAKAの楽しみの一つとなっております。

0419_04

写真_ホテルグランヴィア大阪26階からの眺め

今回、出展ギャラリーの中の15軒が参加されます[EXHIBITION PLUS]では、展示専門スタッフも加わり展示により力を入れていきます。美術館でもホワイトキューブでもない、ホテル客室という生活空間に近い場所を異空間に変えてしまうことができるのは、現代美術の醍醐味でもあり、「ART OSAKA」ならではのものではないでしょうか。フェア開催当日、ギャラリスト・アーティストたちの手によってどのような展示がなされていくのか楽しみで仕方がありません。

下見途中、「ギャラリーやアーティストのご要望にできる限りお応えします。」と柔軟に対応してくださるホテルスタッフさん。そのお言葉に胸が熱くなり、たくさんの力が結集してART OSAKAが形作られていることを実感いたしました。

ホテル高層階に約50ものギャラリーが一堂に会す「ART OSAKA」。7月12日(土),13日(日)のたった二日間の開催となりますが、アーティストと会話することやアートに触れること、「アートを買う」ことで広がるアートの楽しみ方をより多くの方々に味わっていただけますよう、実行委員並びに事務局ともに尽力させていただきます。

Text:室谷智子(ART OSAKA 2014事務局スタッフ)

多様なアートフェアのかたち

写真_会場外観

写真_会場外観

みなさまこんにちは。3月も中頃に入り先日まで続いていた全国的な寒波も少し落ち着いてきましたが、もう少し暖かい日が続くのが待ち遠しいですね。

さて、今回のブログは、ART OSAKA事務局にて、2月からスタッフをしております新人・鈴木が東京のアートフェアを見に行った感想を執筆していきます。

全国的に雪も散らついていた 3月7日(金)、8日(土)、9日(日)と東京では「アートフェア東京」(東京国際フォーラム 展示ホール)と「3331 ART FAIR Various Collectors’ Prizes」(3331 Arts Chiyoda(以下:3331))という2つのアートフェアがおこなわれました。

「アートフェア東京」は今年で9回目を迎え、企画展示やトークショーも充実し、日本最大のアートフェアとして連日多くの来場者で賑わっている様子でした。アートフェア東京事務局さんからの速報ですと、来場者数は約5万人にも上ったそうです。

本ブログでは、もう一つのアートフェア「3331 ART FAIR Various Collectors’ Prizes」に足を運んでみての感想を綴っていきます。

写真_会場入り口

写真_会場入り口

今回の3331のアートフェアは、コレクターがセレクトした作家を集め、フェアを開催するというタイプのものでした。2005年から毎年歴史を重ねているアートフェア東京とは異なり、このようにアートフェアを開催するということが新しい試みとなります。

出展単位がギャラリーという通常のアートフェアとは異なり、セレクター(コレクター)によって選ばれたアーティスト一人一人に空間が設けられ、総勢 91名のアーティストが一堂に会し、1階のギャラリー空間で作品の展示販売がされていました。

写真_会場風景1

写真_会場風景1 

少し過去の3331のHPを遡ると2013年に「3331 ART COLLECTOR FAIR」(2013/4/6-2013/4/21)をという展覧会を開催していました。こちらは、フェアではないものの、アートコレクターや団体の持っている作品のコレクション展をおこなうという企画だったそうです。

「3331 ART COLLECTOR FAIR」2013年の企画詳細についてはこちら

ギャラリストでもなくキュレーターでもないコレクターの視点から、展覧会やアートフェアの開催がおこなわれることで、普段美術鑑賞のみをしている方々に、現代美術の作品を「買う」という、鑑賞を超えた関わり方を伝える、新しいきっかけづくりがなされているように感じました。

そして今回、特徴を感じた部分が、「コレクターズ・プライズ」というものが設けられていたことです。これは本企画でセレクターとなった人物や、その他コレクターや団体が賞を設けることで、選出されたアーティストの作品を積極的に購入するなどして、現代アーティスト育成の一翼を担うものとして存在しています。

会期自体も、通常のフェアでしたら3日間程度の短期間で開催されることが多いですが、3331のフェアは1週間おこなわれています。これはカフェやコミュニティスペース、多様なジャンルのギャラリーが1つの施設内に入っており、幅広い世代や分野の人々が集うアートセンターという特質を活かしたもののように感じました。通常のフェアのより会期を長くすることで、「アートを買う。」ということを身近に感じられるようなきっかけづくりとなっているのではと感じました。

写真_会場風景2

写真_会場風景2

会期中のイベントでは、7日(金)におこなわれたトークイベントとレセプションパーティーからはじまり、10日(月)から13日(木)、15日(土)のほぼ連日おこなわれるコレクターズナイト、16(日)におこなわれるシンポジウムなど、1日1イベントのペースで様々な取り組みがおこなわれていました。

写真_会場風景3

写真_会場風景3

今回のフェアをみたことで、一言にアートフェアと言っても、大規模な展示場を使用するものや、アートセンター内でおこなわれるもの、ART OSAKAのようにホテルのワンフロアを使用するなど様々な場所でおこなわれています。場所が異なえば、フェアのアプローチの仕方も様々だということを改めて感じました。

数あるフェアの中でART OSAKAは、ホテルという場所を活かし、家具などが置かれる日常生活に近い雰囲気で作品を身近に感じていただくと同時に、やはり非日常的な特別な空間を持つ中で現代美術をご覧頂きたく思っております。アートに関心のある方はもちろんのこと、ホテルに宿泊される方にも足を運んでいただき、「アートを買う」ということに少しでも関心を向けていただけますよう、実行委員並びに事務局は7月12日(土)、13日(日)の会期に向けて着実に動いております。

展覧会概要
タイトル:3331 Art Fair –Variuus Collectors’ Prizes-
会期:2014年3月7日(金)〜3月16日(日)
会場:アーツ千代田3331 1階メインギャラリー
主催:3331 Arts Chiyoda
URL :http://artfair.3331.jp/

Text:鈴木香澄(ART OSAKA 2014 事務局スタッフ)