第1弾「アートで目覚めるvol.3」作家インタビュー:今尾拓真

ART OSAKA 2015 企画展、「アートで目覚めるvol.3」(協力:京都市立芸術大学)に出展する若手作家に、ART OSAKA 実行委員がインタビューをしながら、作品の背景にあるもの、ART OSAKA での展示の構想、今後の展開についてお話をお伺いました。
第1弾は、今尾拓真さんに、ART OSAKA実行委員長の松尾良一(テヅカヤマギャラリー)がインタビュー。

work with #1 (京都市立芸術大学 大学会館ホール ) / 2015年 ※京都市立大学内「大学会館ホール」の空調設備のダクトを利用した作品。ホール側にビニル製の袋と回廊側にリコーダー、ハーモニカなど楽器を取り付けている。空調からでる空気の流れによって、ビニル製の袋が舞い楽器が鳴る構造になっている。作品動画は以下よりもご覧いただけます。 https://youtu.be/d6lgkTS43sk

work with #1 (大学会館ホール空調設備) / 2015年
※京都市立大学内「大学会館ホール」の空調設備のダクトにパイプを繋げ、ビニル製の袋とリコーダーやハーモニカなどの楽器を取り付けた作品。空調から流れる空気によって、ビニル製の袋が舞い楽器が鳴る構造になっている。作品動画は以下よりもご覧いただけます。
https://youtu.be/d6lgkTS43sk

〈 いろんな素材を 〉

松尾(以下、M):今尾さんは京都の出身なんですね。

今尾(以下、I):はい。京都の出身です。

M:昔から、京都市立芸術大学(※以下京芸)に入る理由とかありましたか。

I:高校は美術の学校とかではないですが、その頃から美術作品をぼんやりと作りたいなと思っていて。京芸に入りました。

M:彫刻を専攻することは、最初から決めていたの?

I:いろんなメディアを扱えていろんなフィールドに対して作品として提起していくことができるので、入学するときから彫刻専攻でと思っていました。京芸の彫刻専攻って基礎から順番にいろんな素材を触っていくんです。入学当時から、できるだけいろんな素材の特性を知っていた方がやりたい事に合った制作が出来るんじゃないかと思っていました。

〈 周りの状況と音の接点 〉

symathy / 2014年

sympathy / 2014年

M:今尾さんのポートフォリオを見て、すごく一貫しているという印象があります。

I:ここ一年くらい音をメインで扱っています。美術ということ、制作ということとかを考えながら。社会や周りを意識して作品として仕上げていこう、出していこうっていうのを考えだしたのが、実は最近で。

M:この音を出すシリーズってだいたい、いつからやってるの?2013年とか?

I: 2014年に入ったくらいです。それまでは、バラバラと作っていました。表面的にはバラバラしていると思いますが、それぞれ並べて考えてみると共通性や自分の興味が見えてきて。今は、実際にそれを実現させるものにフィードバックしています。

M:作品と人とのコンタクトは、意識をしている?

I:僕は「作品」というものを考えた時に、他のものとの関係の中で初めて成り立つと考えています。そういう周りの関係と作品との接点を考えた時に、作品と人とのコンタクトもあると思います。

始めは電気を使って機械で音を鳴らすことをしていました。でも、作品と動力の接点に対して気になりだしました。電気を使い、コンプレッサーを動力として音が鳴るんですが、機械の部分はブラックボックスになっていて、どうコンプレッサーが動いているか分からない。そこの接点が無理矢理のように思えて、しこりのように気になりだしたんです。

ドレミファソラシド / 2014

ドレミファソラシド / 2014年

I:実際に見る人と作品が関わることで作品が成立するようにしたら、つながりが自然になるんじゃないかと考え、動力が人である、鑑賞者を取り込んだものを作りました。でも、結果、僕の見せたい作品と、実際に動力になっている人(鑑賞者)が見ている状況とがずれることになってしまったんです。僕が作ったのは「作品」ではなく、作ったものに人が乗っている「状況」なんです。作品と鑑賞者との関係を見せたいのに、鑑賞者は作品に取り込まれ、その体験しか見ていない。そういう入れ子の状況があって。

〈 作品展”work with #1”について 〉

I:周りと自分の作ったものが繋がっているところを作品として見てほしいので、一度人から離れてみて、その2月の京芸作品展の ” work with #1″ になりました。モノを扱うけど、僕が全部をコントロールするんじゃない方法で。

work with #1 (京都市立芸術大学 大学会館ホール ) / 2015年

work with #1 (大学会館ホール空調設備 ) / 2015年

I:この塩ビ管がもともと建築についている空調のダクトです。上から空気が下がってきて通路側とホール側の両方に風が行くような構造になっています。ホール側のダクトにビニル素材の袋をつけて視覚的に空気を見せると同時にそこを塞ぐ。そっちに行けなかった風を通路側にまわして、音にしている構造です。もともとある状況に対して関わることで、動力と音との接点を見せる方法をとってみたんです。そうしたら見てもらいやすくなりました。

作品で扱っている素材は、僕のモノだけど世の中から借りてきたもので自分は作っていると考えています。これは、今、僕の作品として写真に載せているけど、別の言い方をすれば全然僕のものじゃないですよね。ある捉え方をすれば作品だけど大学の施設でもあって、その辺が曖昧なんです。

今尾拓真

今尾拓真

M:この空間で、実際いろいろ試行錯誤あったかもしれないけど。あの壮大な感じで仕上がったのは、気持ちよかったんじゃない?

I:気持ちよかったです。

M:片付ける時には残念な気持ちもあるけど、空間もそこのダクトも建物の構造物としてあるものも全部自分の作品の中に取り込めたっていうことだね。

I:そうですね。一期間だけ。

M:でもその永久性が無いことの面白さもあるし。

I:そうですね。それがすごい僕が大事にしたいとこでもあります。どんなものを作っても、永い年月やその時の時代背景によってなくなるかもしれない。そういうことを考えた時に、絶対性みたいなのをあんまり信じてないっていうか、

M:残る物は残る物でいいけど、こういうことも面白い。

I:むしろそのほうがリアリティーがある。

ART OSAKA 実行委員長 松尾良一(テヅカヤマギャラリー)

ART OSAKA 実行委員長 松尾良一(テヅカヤマギャラリー)

M:僕が目の当たりにしたのはこの作品しかないけど、これを見た時に「お。取り込んでるな」って感じた。普段は気にしないダクトを見て「こんなのがあるんや」とも思うし、どこまで構造物だったのかとも思う。いつもやったら通らない2階に上がって、ゆっくりラウンドしてしながら、全体の流れる空気が見えるようで。

I:実は僕、2階をめちゃくちゃ掃除したんですよ。物もどけたし、ダクトも拭いたし。掃除しているのか、制作しているのか謎の時間がありました。結構それが気持ち良くって、「僕のやりたい制作ってこういうことやな」とか思いながら掃除していて。

M:その苦労全然分からなかった。

I:掃除をするのは楽しいですし、嫌いじゃないです。僕の中では、材料を加工するのと、場所を掃除したりするのを区別したくなくて。そこで掃除をしているのも作っているということに入る気がします。

〈 今後の活動は? 〉

M:違うところでも、展示の予定入っていますか?

I:予定は、ちょうど昨日決まったんですけど、6月に*「ゲンビどこでも企画公募」に入選して。展示させてもらえる場があるというのはすごくうれしいです。
*「ゲンビどこでも企画公募」 URL:http://www.hiroshima-moca.jp/dokodemo/

M:どんどんそういう面白い公募みたいなのがあって、自分のやりたいのはどんどんやっていこうとしているんですね。

I:そうですね。作品展でやった方法論をホテルとかアートフェアとかに当てはめた時にどうなるかって言うのをART OSAKAでの展示ではやってみたいです。なかなか難しそうですが。

M:最初ね。この展示を見ておもしろいなと思って。だけど、「いや。ART OSAKAでできるかな。どういうふうにするかな。」と思いました。そこはチャレンジというか。僕だけに限らず、他の実行委員の皆さんも面白いなって言うことで、選ばしてもらったのもあるから。次を期待しています。

〈 今尾拓真 略歴 〉
2015 京都市立芸術大学 美術学部 彫刻専攻 卒業
1992 京都府生まれ

・グループ展歴
2015 ゲンビどこでも企画公募展(旧日本銀行広島支店/広島)
2014  どうしよ(京都市立芸術大学大ギャラリー/京都)
2013 やってるよ(京都市立芸術大学大ギャラリー/京都)
2013 親が期待しすぎる(京都市立芸術大学大ギャラリー/京都)

・受賞歴
2015 ゲンビどこでも企画公募2015(やなぎみわ賞)
2015 京都市立芸術大学卒業制作(市長賞)

編集 / 室谷智子(ART OSAKA 事務局)

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6/21「反撃!抽象絵画」トークイベントのお知らせ

特別展「反撃!抽象絵画」チラシ(表)

特別展「反撃!抽象絵画」チラシ(表)

みなさんはじめまして!今年度からART OSAKA事務局に入りました、川西と申します。いよいよフェア当日まで残り2ヶ月を切りました。出展ギャラリーのみなさんと協力をしながら、素敵なフェアになるよう努めて参りますので、引き続きご注目のほど、よろしくお願いいたします。

さて、ART OSAKA 2015ではフェア期間中、ホテル同フロアにて特別展「反撃!抽象絵画」を開催いたします。いま、抽象絵画にはどのような可能性があるのか。「新たな抽象絵画論」を問う試みとして、現存作家による日本の抽象絵画を紹介いたします。6月21日(日)にはプレ企画としてトークイベントを開催いたしますので、まずはその告知をさせて頂きます。出品作家も参加いたしますので、どうぞお見逃しなく!

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トークイベント「あらたなる抽象絵画論ーイメージと空間」
登壇作家:木村秀樹、東島毅、北𡌛吉彦、中川佳宣、寺島みどり
モデレーター:加藤義夫(本展キュレーター)
日時:6月21日(日)15:00〜17:00
(トーク終了後、1時間程度の交流会を予定)
会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター enoco
入場料:500円(事前予約不要)

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ART OSAKA 2015 特別展「反撃!抽象絵画」チラシ(裏)

ART OSAKA 2015 特別展「反撃!抽象絵画」チラシ(裏)

text:川西遥(ART OSAKA 事務局)

ART OSAKA 2015 今年はエメラルドグリーン !

ART OSAKA 2015 LOGO

ART OSAKA 2015 LOGO

お久しぶりです!ART OSAKA 事務局、宮本です。

春は別れと、新しい出会いの季節。 気持ちがどこかフレッシュになります。この気持ちを追い風に、ART OSAKA 2015 に向けて、事務局も7月までちょうど3ヶ月走り続けます(笑)。

もうお気付きかと思うのですが、実は今年からART OSAKAのカラーを、エメラルドグリーンに変えました。

カラフルロゴマークに一新したのは2013年度からでしたが、実はその時から毎年キーカラーを設けて、色による展開を想定しておりました。2013年、2014年はロゴの定着を優先し、キーカラーを導入を見送っていたのですが、満を持してこの度いよいよ(← そんな大げさじゃないですが)、2015年はキーカラーをエメラルドグリーンに決定しました。様々な広報物を緑色でPRをしてまいります。

4月1日 印刷物の打ち合わせ (株 )ライブアートブックのIさんとデザイナーの 芝野君

4月1日 印刷物の打ち合わせ (株 )ライブアートブックスのIさんとノマルグラフィックス デザイナーの 芝野君

例年より1ヶ月ほど早いですが、ART OSAKA 2015 のチラシも実はもう印刷に入っております!

昨日は、ART OSAKA へ印刷ご協賛頂いている (感謝!) (株) ライブアートブックス (旧社名 (株)大伸社さん) の Iさんと色味の確認を致しました。風合いのある紙質の影響で落ちてしまう色味を、蛍光インキを少し足すことで鮮やかな色味にしてもらいました。そんなところまで気を配って下さることに感激。

4月半ば頃には配布が開始されると思いますので、綺麗なエメラルドグリーンのチラシを見かけたら、ぜひお手に取ってくださいね。

それでは、ART OSAKA 2015 をお楽しみに。

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ART OSAKA 2015
会期:2015年7月4日(土)ー5日(日)
会場:ホテルグランヴィア大阪 26F
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text:宮本典子(ART OSAKA 事務局)

ART OSAKA 2014 フォトレポート第2弾

皆さまこんにちは、ART OSAKA事務局です。 第1弾のレポートに続き、フォトレポートブログ第2弾をお届けします。 このブログでは企画展とExhibition PLUSについてご紹介していきます。 それでは早速企画展のご紹介から。

Lucie & Simon『Silent world』

展示室の様子:Lucie & Simon

展示室の様子:Lucie & Simon 撮影:早川智彬

ART OSAKA が JEUNE CREATION とパートナーシップを組んで行う日仏若手作家交流企画の第2弾。
Lucie & Simonは、都市風景や日常生活を静謐で叙情的な映像と写真で表現している新進気鋭のアーティストで、今回が初来日。日本初となる発表を、このART OSAKA 2014で行うことが出来ました。 会期中は、作家が通訳を介して、来場者と積極的にコミュニケーションをとりながら作品を紹介しているのが印象的でした。

京都市立芸術大学『アートで目覚めるvol.2』

展示室の様子:京都市立芸術大学 写真奥真ん中:松平莉奈 写真手前左:髙木智子

展示室の様子:京都市立芸術大学 写真手前左:髙木智子 写真奥中央:松平莉奈 撮影:早川智彬

京都市立芸術大学とのコラボレーション企画で新人作家4名を紹介。 連日出展作家も会場入りし、多くの来場者の反応を直接感じる刺激的な機会になりました。 次の展示機会へ繋がる話もあったとか。今後の活躍が楽しみですね。

アート高雄inアート大阪2014

展示室の様子:ART 高雄

展示室の様子:アート高雄 撮影:早川智彬

フェアパートナーシップを組んでいる「アート高雄」のブース。Galerie Grand Seicle と Chuan Cheng Art Center が共同で展示構成をし、フェアのプロモーションを行いました。今度は、12月におこなわれる高雄のフェアにもART OSAKAのブースが出展予定です♪

大阪・ハンブルク友好都市提携25周年記念事業 『マリエラ・モスラー& ウエダ リクオ』

写真奥_ガラス面:マリエラ・モスラー 写真手前_立体:ウエダリクオ

写真奥 ガラス面:マリエラ・モスラー 写真手前 立体:ウエダリクオ 撮影:早川智彬

窓につけられているのは、マリエラ・モスラーのマスクシリーズ。作品の中には日本に着いてから制作、仕上げたものもあったそうで、それも現代美術の所以! 窓際の台の上に置かれている作品はウエダリクオの代表作である風シリーズのオブジェ。他にも映像や、風のコレクションが出展されました。

Exhibition PLUS

ART OSAKA 2014では、通常の展示室とは別に”PLUS”というカテゴリーを設け、個展形式やテーマ性を持たせた展示枠をつくりました。今回は出展ギャラリーの中から16のギャラリーがExhibition PLUSに参加されました。 通常の展示室とはまたひと味異なり、インスタレーションのような展示が数多く展開されました。

大﨑のぶゆき 個展 / ギャラリーほそかわ

大﨑のぶゆき 個展 / ギャラリーほそかわ 撮影:早川智彬

 

架菜梨案 個展 / ギャラリー工房 親

架菜梨案 個展 / ギャラリー工房 親 撮影:早川智彬

岩井知子 個展 / FUKUGAN GALLERY

岩井知子 個展 / FUKUGAN GALLERY 撮影:早川智彬

尚、展示風景の写真はflickerにまとめていますので、お時間のある時に是非覗いてみてください。 また、クロージングレポートもこちらにあります。 まだまだ暑い日が続きますが日常生活の気分転換に、このフェアを機に出会ったギャラリーへ足を運んでみてはいかがでしょうか。 来年はもっと深くフェアをお楽しみいただけますよ!

text:鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

ART OSAKA 2014フォトレポート第1弾

展示室の様子_ギャラリー301

展示室の様子:ギャラリー301 平面の作品:ユルキヤスヒト  中央の台彫刻:安見友太 撮影:早川智彬

こんにちは、ART OSAKA事務局です。ART OSAKAが閉幕して早くも3週間。 ご来場いただきました皆様、関係者の皆様へ運営側一同心よりお礼申し上げます。 早速ですが、ブログは2回に渡りフォトレポートをお届けします。 第1弾はフェア期間の様子を写真で振り返って参ります〜。

栗棟美里 作品 / テヅカヤマギャラリー 

栗棟美里 作品 / テヅカヤマギャラリー 撮影:早川智彬

7月11日(金)内覧会 フェア初日は天気予報では台風が関西直撃と予想され、どうなることかと思いきやそんな心配をよそに晴れ間のみえるお天気となり、多くの招待客の方々にお越し頂きました。夜にはカクテルサービスをおこない、ドリンクを片手に会場をゆっくりご覧いただきました。

会場風景

受付け前会場風景 撮影:早川智彬

7月12日(土)一般公開 一日目 ナイトビューイング 一般公開の土曜日になると、会場直後からどんどんお客様がご来場されました。夜は年々定着してきたナイトビューイング(19:00-21:00の時間帯)を開催しました。昼間の印象とは一味違う雰囲気の中で、作品を楽しめる特別な夜となりました。

ナイトビューイング風景:ウェルカムドリンク

ナイトビューイングの様子:ウェルカムドリンク 協賛:アサヒビール(株) 撮影:早川智彬

7月13日(日)一般公開 二日目 フェア最終日は、フランスの芸術団体 “JEUNE CREATION ” との交流プログラムで、この秋にパリで開催されるグループ展JEUNE CREATION に招待派遣される、若手作家1名を決める審査が行われておりました。

JC選考審査の様子

JC選考審査の様子 撮影:早川智彬

今回見事グランプリに輝きましたのは、奈良と東京にスペースを持つGallery OUT of PLACEから出展していた中島崇さんです。おめでとうございます。 中島さんは、Exhibition PLUSの部屋で大量の枕を繋げたインスタレーション作品を展示していました。フランスでの展示も楽しみですね。

JC最優秀賞に選ばれた中島崇氏のインスタレーション作品

JC最優秀賞に選ばれた中島崇氏のインスタレーション作品 撮影:早川智彬

今回のフェアでは、出展ギャラリーの展示も然ることながら、昨年に続くJEUNE CREATIONの審査発表、企画展の数の増加とそれに伴う関連イベントの開催、ホテルとのコラボ商品販売等でフェア全体に盛り上がりをみせました。

展示室の様子:Yoshimi Arts

展示室の様子:Yoshimi Arts 撮影:早川智彬

次のブログでは今回紹介しきれなかった企画展をご紹介致します。 (つづく)

text :鈴木香澄(ART OSAKA 事務局)

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

ART OSAKA 2014 企画展
出展作家インタビュー 『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2
髙木智子×松尾良一(TEZUKAYAMA GALLERY/ART OSAKA実行委員長)

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm  ©Tomoko Takagi

《Trio》2014|油彩、キャンバス|230×332 cm ©Tomoko Takagi

《Trio》—この一年の制作について

松尾:今年も去年も、京都市立芸術大学の作品展では髙木さんの作品を拝見して、「あっ!」と印象に残るものがあるんですよ。あまり頭でいろいろ考えてというよりも、直感的に良いなと感じて入っていく事が僕自身は多くてね。コンセプトを聞いてなるほどと思う事もあるんだけど、やっぱりパッと見て「あーいいな!」と。

髙木:ありがとうございます。この一年間は、自分がどういう事をしたいのか、学部生の4年間でやってきた事との繋がりなどを言葉に置き換えていく作業が続いていたんです。2月の作品展では、それをやっと絵の具に置き換えて少し納得がいくようになってきたところでした。

松尾:じゃあ、コンセプトよりも、例えば、制作の技術的な事に集中されていたとか?

髙木:そうですね。色の事とか、絵の具の事とか、これまでは無関心だったところも掘り起こしてみたりして…。モチーフ自体は、何かモノを描きたいという思いは変わらずにあるので、それを抽象みたいに出来ないかなと思って。

松尾:身近なというか、京都で歩いているとモチーフになるものがある、と仰っていましたよね。

髙木:出来るだけカメラを持ち歩くようにしていて、「あーなんか気になる!」感じるものをいっぱい撮りためているんです。どうやら自分には、人が飾っているものとか、自分が並べたものではない状態の色の組み合わせに、「なんだこれは」と反応しているところがあって。それは描くモチーフを選ぶ基準にも繋がってきています。

松尾:作品展で出品されていた《Trio》という作品は?

髙木:これは、丸亀のお城の下でやっていた盆栽展の中で見つけた3体の人形の飾りが元になっています。普通に真面目な盆栽が並んでいるのですが、いくつかは不思議な飾りがされている盆栽もあったんですよね。なので、人形とかモノの位置関係はすごく忠実です。

松尾:不思議やな(笑)。

髙木:今は、同じモチーフを何枚か描き続けるように制作しています。一枚つくってから、次はもっとこの部分を伸ばそうとか、構図は縦にする方がいいかなとか、焦点のピント位置をずらしたりと、描いていく中で次のアイディアが具体的に現れてくる感じです。

松尾:色の使い方が独特ですよね。色目の濃淡がけっこう好き。

髙木:透明のメディウムに絵の具をちょっと混ぜて、白の下地にのせると透明色がぐわっと出てくるので気持ち良いんです。

松尾:モチーフを撮りためた写真にも、もともとカラーという色味があるじゃないですか。実際に描く時には、自分で目標としている色にモチーフの色を変化させて近付けていくのか、それとも、キャンバス上で偶発的につくりながら決めていくのですか?

髙木:描きながら目の前で混ざり合って、いい感じだなあと思う事ももちろんあるのですが、たいていは絵の具をあまり混ぜないので、この色をと自分が思うものを先に決めて描いています。最近は下地を白色ではなくピンク色か緑色の2パターンでつくり、その上に描き始めていくようにもしていました。

松尾:画面構成は、全く違う写真の場面から組み合わせてつくり始めてもいるようですね。

髙木:はい、それもやり始めています。描かれているものが何であるのか、パッと見えてしまう事から逃れたいと思っていて…。他にもシンメトリーな構図にしたりだとか、どんなふうに絵の具を動かして物質感をコントロール出来るのか、いろいろと試し中です。油絵の具は透明にも不透明にもできるし、一番薄い状態からすごく分厚いところまで幅をもたせられるのが…。

松尾:すごくフィットすると?

髙木:そうです(笑)。takagi_matuo

 

物がどう見えるのか、を考え直す

髙木:実は、いろんな大人の人に聞きたいと思っていることがあって…逆に質問させていただいても良いですか?

松尾:お、何かありますか?

髙木:えーと、学生くらいの時に、大人になったらいろんな事が全部分かるようになって、何でも理解できているようになるのかもって、思っていた気がするんです。そういうふうに思った事って、松尾さんにもありましたか?

松尾:まあ、あったんじゃないかな。子どもの頃とか、そう思っていたかもしれない。

髙木:で、でもどこかで全部は理解し切れないんだなと気付いた時には、どう思いましたか?

松尾:世界って広いなあ、って思った。僕ね、25歳くらいでこの仕事を始めて、最初はアートビジネスなんて自分で全部出来るんじゃないかって思っていました。漠然と、世界で一番になれるんじゃないかっていうくらい(笑)。それは大きな間違いだなというのは、人生もそうだけど、この世界も仕事も知れば知るほど深くなっていくわけ。子どもの頃は学校で一番だったら、世界で一番ちゃうか!ぐらいに思っているけどね(笑)。歳をいけばいくほど、自分の小ささを感じる。無力さというか、こんなもんなんやなーみたいになってくる。でも、それでいじけるんじゃなくて、もうちょっと頑張ろうってね。

髙木:続くんですね。

松尾:続くよ。

松尾:本当は結構ね、何でも分かった気になって天狗になっている人も居ると思うよ。でも人間って、「うわぁ、俺ってもっと頑張らな!」って思っている方がやる気が出るんじゃないかな?あと、周りの仲間や友だちを見て、「あいつも頑張っているから、俺も!」とかね。

髙木:この話とはあまり繋がっているように思っていただけないかもしれないのですが、最近、物がどう見えるのかという事をもう一回きちんと考えてみようと思っているんです。かつて浪人している時には「デッサンはこういうふうにするんだよ」と、既に出来上がっている方法でいろいろと教わったりもしたんですが、本当は物を認識するのってそういう事じゃないよなーと。自分が描いているものが、立体感や空間のパースペクティブをちゃんと出すというわけでもないので、改めて、じゃあ何なんだろう?と。

松尾:物の対象の見方として、どういうふうにしていくかという事は、作品を描くにあたっての一つの自分のスタイルでもあるだろうし、同時にコンセプトでもあるだろうし…。自分の精神のどこかにそういう思いを持っている事が、直接的では無いかもしれないけど、いずれ間接的にでも、髙木さんが描く何かに現れて出て来るかもしれないね。例えば、そういう自分の表現を文章や言葉に出来るのなら、出来るほうが良いし必要だと思う。

髙木: はい。やっておきたいですし、出来るようになりたいですね。どう見ようかなと、どう描こうかなとは、やっぱり自分の中で繋がっている事なので、模索中ではありますが…。それから、盆栽の中の人形もそうですが、人が飾っている物を描くのは、私にとってある種の理解できない事として興味を持っているからではないかと思うんです。世界の全てを理解し切れないのだとしたら、自分の身の回りの小さい関係を確かめていくしかないので、私は描いていく事で、もう一度世界のいろいろな物事を見ていくのだと思います。

松尾:来年春の卒業後、アーティストとして活動していくにあたって、具体的なイメージはありますか?

髙木:すごく漠然とはしていますけど、住むところと描くところをちゃんとする、というくらいでしょうか。いまは制作を集中してできる場所にいるので、描く内容と絵の具のことをずっとやってはいますが、なぜこれを描くのかという部分をまだまだ考えたいです。発表する場所は、気になったら何でもやろうという思いは常にあります。

松尾:「ART OSAKA」では、新作を?

髙木:はい。

松尾:ぜひ楽しみにしています。

髙木:ありがとうございます。
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インタビュー収録:2014年5月12日、TEZUKAYAMA GALLERYにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

 

髙木智子 略歴

1989年千葉県生まれ。現在、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画在籍。
2014年京展にて市長賞・京都市美術館賞を受賞。昨年の『ART OSAKA』企画展にも出展。
個展:2014年ギャラリー恵風(京都)2013年ギャラリ−モーニング(京都)他/グループ展:2013年「アートアワードトーキョー」行幸地下ギャラリー(東京」他。

『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2』 前谷康太郎×細川佳洋子(ギャラリーほそかわ/ART OSAKA実行委員)

ART OSAKA 2014 企画展 出展作家インタビュー 『京都市立芸術大学 アートで目覚めるvol.2 前谷康太郎×細川佳洋子(ギャラリーほそかわ/ART OSAKA実行委員)

前谷康太郎《further/nearer》2013|ビデオインタレーション|2分(ループ)、サイズ可変(スクリーンサイズ180×240 cm) |梅香堂(大阪)にて ©Kotaro Maetani

前谷康太郎《further/nearer》2013|ビデオインタレーション|2分(ループ)、サイズ可変(スクリーンサイズ180×240 cm) |梅香堂(大阪)にて ©Kotaro Maetani

《further/nearer》‐作品のバイオリズム

細川:私が最初に前谷さんの作品を拝見した時は、まだ京都市立芸術大学(以下、京芸)には入学されていなかった頃だったんですよね。既にテクニカルな事も勉強して完成度の高い仕事をされていて、抽象的な映像作品でしたし、強く印象に残りました。その後に、なぜ改めて京芸に入ろうと思われたのでしょう?外語大に在籍されていた時からビジュアルアートには興味があったのですか?

前谷:それは大学に入る以前からですね。ただ、進学校の高校だったので画塾に行く時間は無かったですし、父親にも「美大」とポロっと言ったら「ややこしいから、とりあえず外語大に入りなさい。美大に入ってもいいけど、その後にしなさい。」と言われて(笑)。

細川:では、お家の環境はとしては、美術や美大に対しても寛容だったんですね。

前谷:はい、そうだと思います。

細川:映像の構造的な理論について私は詳しく分かっていないところもあるのですが、ずっとこれまで見て来た中で、前谷さんの作品は映像そのものというよりも、一種の宗教的なものに包まれるような圧倒感があります。例えばロスコーのような…そういう絵画的なイメージにも当てはめてみたいなと思うのですが。

前谷:たしかに動画である一方、没入すると静止画を見ているような気分になるところがあります。変化がとてもゆっくりで、残像が目に焼き付くせいだと思いますが、その目に焼き付いた静止画としての残像と、スクリーン上で進行している動画が重なる感覚というのは、他の映像作品でも絵画作品でもないものだと、他の方からもつい最近そういう感想をいただいて、そんな側面もあるんだなと気付かされました。

細川:一つの鼓動というか、祈りと近いような静かに思考しているリズムとすごくリンクするような作品というか…。前谷作品のその動きは、仏教的な感じでもありますよね。私には、やはり生命のビビットなリズムじゃなくて、その狭間の沈思黙考の時の鼓動や脈と、前谷さんの映像作品とが同期するように感じられます。もっと極端に言えば、生と死の中間くらいのところの脈。

前谷:ありがとうございます、すごく嬉しいです。僕は小さい頃高野山で育った事や、仏教学者である父親の存在もあって、家では読経をして内省する時間を毎日持つようにしています。こういった習慣と作品のもつ波長との間には、潜在的なつながりがあると思っていて、それを見て取っていただけたというのは、とても感動的です。 関東のあるキュレーターの方が個展を見に来てくださった時、お忙しい時期ですごく疲れ果てていらっしゃったのですが、その状態の彼女自身のバイオリズムと作品《further/nearer》が鏡像のようにリンクし、浄化(カタルシス)を感じたそうです。細川さんのおっしゃった「生と死の中間くらいのところの脈」というのは、まさにこの方の例にあてはまる気がします。

細川:ある種すごく生命的なんですよね。

前谷:東洋思想にはもともと興味があって、外語大受験の際も最初はヒンディー語専攻を考えたのですが、父親が読めないアラビア文字が読みたいという、ちょっとした反発心から(笑)ウルドゥー語を選択しました。

細川:なるほど。そういうアジアの言語を選んでそれが今の前谷さんのお仕事に何か繋がっているというのはありますか?

前谷:あると思います。今回の『ART OSAKA』でも出展させていただく《further/nearer》は、焦点外の領域に目を向けた作品でして、世界の認識の仕方としてはかなり東洋思想的だと言えます。般若心経の中にも「それが何であるか、認識できるものばかりが全てではない」と説いている一説があります。実体が見える世界を、焦点があっている領域だとすれば、この作品はその世界と垂直に交差する光の可動域(実体の見えない、焦点外の世界)を表しています。そして多くの場合、前者よりも後者の方が広い領域を持っています。また、これは焦点の話よりも大きな話になってきますが、私たちの目も常に、見えていない世界の方が広いはずです。そういった領域の光を感じてもらうというのが、この作品の大きなテーマです。 maetani_hosokawa2

光を集める-映像の素材として

細川:以前に、後々田さん[※]が「これからあいつは光を集めに行くんだよ」と、前谷さんの事を仰っていたのですが、撮影のためには街の中へと光源を拾いに行かれるのですか?

前谷:そうですね、車で走って。そのお話しはちょうど昨年に光のロードムービーを撮っていた頃の事ですね。車の後ろに、敢えて不完全な像を結ぶようなオブスキュラを積んで走って撮影をしていました。 一番最初は、このオブスキュラと同じ構造の部屋を用意して、そこで夕日の光を採集していました。この、太陽光をサンプリングしたビデオインスタレーションからスタートして、その延長線上でいろいろな人工の光も使ってみたりしています。 外語大で言語学を勉強していた過程で、言語の持つ分節性は、多くのカット構成から成る映像においても見て取れるなと気付いて…音声言語における、音素に当たるものとして太陽光などのよりプリミティブな光を拾ってきて、それを構成要素に使おうと思ったんです(a light in memory(2011))。人工的な光を使う場合でも太陽光を想起させるような色彩を意識しています(further/nearer 2012, 2014(2012,2014))。

細川:暖色系の赤、オレンジ、黄色以外にも、ブルーの光の色の作品もありましたよね?

前谷:それは青空から採ってきた光ですね。

細川:なるほど。ちなみに、話が前後するのですが、後々田さんとの関わりは前谷さんが2010年に初めて此花メヂア(大阪)で個展をされた頃からだったのですか?

前谷:そうですね。その時は会って2回目くらいだったのですが、すごくダメ出しをされて、しばらく凹んで、個展終了後はしばらく梅香堂に行けなかったのですが、久しぶりに行ったらすごく喜んでくれて、「メヂアでの展示、うちでもう一回やらないか。新作じゃなくていい、ちゃんと見てもらえる形にしよう。」と言っていただいて実現したのが2011年の「(non)existence」展になります。

細川:今年2月の大学での作品展では、前谷さんの作品は一部屋をすべて使ってスクリーンに上映されていて、とても説得力がありましたよね。

前谷:実はそうした展示方法についても、後々田さんに強く勧められていた事でもありました。ただ、「やれ」とだけ言っておらんようになってしまったので、僕としても本当にやらざるを得ない状況になって…(笑)短い設営期間でのつくり込みはいろいろと厳しかったですが、自分の中でも大きなキーとなる展示になりました。

※後々田寿徳:大阪市此花区のアート・スペース「梅香堂」の堂主。2013年12月に永眠。福井県立美術館、ICCの学芸員や大学講師を経て、2009年11月に梅香堂を開設。築60年の倉庫を改修したオルタナティブ・コマーシャル・ギャラリーで、気鋭の若手作家を紹介し注目を集めた。  

前谷康太郎《further/nearer》2014|ビデオインタレーション|京都市立芸術大学・作品展にて ©Kotaro Maetani

前谷康太郎《further/nearer》2014|ビデオインタレーション|京都市立芸術大学・作品展にて ©Kotaro Maetani

これからの制作について

細川:今後は、どういう展開を考えておられますか?

前谷:とりあえずは目先の展示に追われていて何も考えられていないのですが、海外へ出た事が未だ無いので、挑戦したいなと思っています。

細川:もし行くとしたら、どういう国に?

前谷:美術をやる環境としてはドイツやイギリスが良いのかなとも思うんですが、制作そのものの展開を考えると、北欧などの白夜や砂漠の蜃気楼など、日本では到底見ることの出来ない光を使って作品を作れたらなとも思います。

細川:それは良いですね。他にも夕日の強烈な大自然の地だとか、たとえその地で作品発表が出来なくても、自然観や死生観が欧米とは全然違う所へ行かれる方が前谷さんの作品には上手くフィードバックされていくような気がします。

前谷:作品にとってはたぶん、本当に仰る通りです。

細川:前谷さんの強みの一つは、日本人である私たちが祈りに近いような状況にある時に呼応して、ヴァイブレーションを起こさせるという面白さだと思うので、そういう土壌のある日本以外の国で独自の表現をますます高めて無敵になっていって欲しいとも思います。期待していますので!

前谷:ありがとうございます。   DSC_0267as

インタビュー収録:2014年6月2日、ギャラリーほそかわにて
編集・文:大場美和/撮影:室谷智子

前谷康太郎

略歴 1984年和歌山県生まれ。2008年東京外国語大学、2010年IMI/総合映像大学、2014年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了。個展:2013年 ICC(東京)、梅香堂(大阪/’11)、2012年CAS(大阪) 他 / グループ展:2014年「Future Tense」ヨシアキイノウエギャラリー(大阪)、2013年「Art Court Frontier」アートコートギャラリー(大阪) 他。